一巻感想はこちら↓
おお、仰ぎ見るがよい、あれこそが後に語られる軍師にして魔王の姿である。
さて、一巻で仮初ながらも領主となったガーディ。彼が功績を積み立てる為、無理矢理ついてきたナロルヴァと共に二人きりで、領地の平定へと挑むのが今巻の主な内容であり、土着の勢力の平定と言うよりは、侵略行為を起こしている他国の軍隊と戦を交えながら、徐々に支持を集めていく巻である。
そして、今巻は前巻では今一発揮されなかったガーディの特異な強さがこれでもかと表に出される、勇躍の巻である。
そう、今ここには面倒な柵も上役もいない。なので何をしようと自由である。故にガーディの策は止まらない。
奴隷狩りを行う他国の斥候隊を幾度となく退けながら、冷静に戦力を計算し、次に行うべき行動を為し、羽妖精の支援の元に次々と敵兵を射抜いていく。
そんな彼の剣として、そして何より背を支え心を支える友として戦場を駆けるのがナロルヴァである。彼女の乙女心と武人としての心のせめぎ合いもまた今巻の見所であり、彼女の魅力を掘り下げる一因となっている。
そして、ガーディの戦場には似つかわしくない優しさもまた、今巻では存分に示されてしまうのだ。
自らの力及ばぬ理不尽に泣き、自らの立てた作戦に殉じ死んだ仲間達を思い、また心で泣く。そう、彼の権能はその意味においては正しく呪いだ。だけど同時に、それは誰かと分かり合うという意味では祝福なのだ。
ガーディだからこそ諸人を引き寄せられた。彼だからこそ、異種族の希望となれた。
「私たちのP・O・D(魔王)に勝利を」
羽妖精達がその声に乗せ願い。
「その者、能く精霊の言葉を聞く大賢人にして、人の姿で生まれし我らなり」
トロール達が彼を称え、詠唱に加え歌い上げる。
それこそが彼の人徳であり、彼の元に集った異種族達は連合となり一つとなり、一丸となって突き進む。
前巻を楽しまれた方は是非今巻も、まだ読んでいないという読者様は是非一巻と二巻を纏めて一気に。
今、もっとも熱い戦記物語の面白さに触れられるはずであるから。