読書感想:古き掟の魔法騎士 V

 

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読書感想:古き掟の魔法騎士 IV - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻までを読まれている読者様は、アルヴィンの類まれなる魂の輝きと、彼女を王として認めた王国、という図式はもうご存じであろう。それは正に新世代の輝き。シドという、古き時代の騎士の前で今まさに羽ばたかんとする、新たな時代を担う者達の輝き。そう、今まさに一つの時代が終わり、新たな時代が始まろうとしている。なれば、倒すべき敵は何か。それこそはエンデア。今まさに魔王とならんとしている者、旧時代の象徴だ。

 

 

教会による儀式は成功を迎え、エンデア、アルヴィンの双子の妹であるエルマは魔王となり。彼女が発動させた禁忌の術式、「黄昏の冬」により。天変地異により不落であった王城は崩壊し、世界は冬と氷雪に閉ざされていく。

 

だが、アルヴィン達は生きている。それだけだ。それどころか「黄昏の冬」により、妖精剣達の力がほぼ全て奪われてしまい。実働できるのは鍛錬を怠った騎士達ではなく、テンコ達シドの教え子達だけ、という危機に陥ってしまう。

 

「ならば―――後は、俺の役目だ」

 

けれどそれでもアルヴィン達は諦めぬ。必死に纏まり戦おうと準備を進める中、シドは彼女に親友の面影と成長を感じ。後は自分の役目だと言わんばかりに、イザベラを媒介に光の妖精神を呼び出し彼女を剣とし。全ての決着をつけるべく、騎士の誓いを破り、一人エンデアの本拠地へと突入する。

 

目の前に立ち塞がるのはかつての友が率いる万来の軍勢。対し、シドは今、「野蛮人」へと再び変わる。誰しもに恐れられたその力をこれでもかと見せつけ、魔王へと駆けていく。

 

果たして彼一人で勝てるのか? 否、そんな事は無い。だが忘れてはいけぬ。彼の背後には、その背を追い駆ける者達がいる事を。ナイスなタイミングで登場する教え子達、今を生きる者達に送り出され。シドとアルヴィンは、エンデアと向き合う。

 

そこに現れるは、全ての元凶であるフローラ。彼女の隠されていた思惑により、エンデアを依り代に降臨するのは、かつての魔王であるアルスル。

 

かつての魔王、それはどういう事なのか。その真実は全て戦いの中で明かされる。シドとアルスルの昔話の真実、アルマとエルマの過去、全てが明かされる中で。今を生きる新たな時代を担う者達に背を押され、シドはアルスルと激突する。

 

「新しい時代は、新しい若者達に託すとしよう」

 

そう、もう古き掟の時代は終わっている。だからこそ、古き掟は新しい掟に変わる。それを導くために、決着をつけ全てを持っていくのは、古き時代の騎士達の役目。

 

「もう、教えることは何もないよ。卒業だ」

 

全てに決着をつけ、己が二度目の命を燃やし尽くし。笑顔と共に世界を去るシドは、古き時代に消えていく。

 

 

「言ったろう? ”騎士は―――真実のみを語る”」

 

だが、二度の人生を戦い抜いた彼に、何も授けぬままで良いのか? 否、それはご無体であろう。アルスルにもう一度託され―――この先を語るのは野暮であろう。

 

古き掟、古き時代。神無き世界を切り開くのは、新世代の騎士達。若き騎士達の成長と、古き時代の騎士の後始末の物語、これにて無事大団円。

 

皆様も是非、最後まで見届けてほしい次第である。

 

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