読書感想:古き掟の魔法騎士 IV

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前巻感想はこちら↓

読書感想:古き掟の魔法騎士 III - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、王と言うものは如何にして王となるのか。王の器であると言うのなら、その器は何処に宿っているのであろうか。立ち振る舞いであろうか、その声であろうか。否、それは心に宿るもの。この作品のヒロインであるアルヴィンの心にもある、王としての器。それを問われるのが今巻であり。一気に全てが加速し動き出していくのが今巻なのである。

 

 

春、それは出会いと始まりの季節。アルヴィン達のクラスであるプリーツェ学級にも神霊位の新入生、ユノを始めとする才能の原石たちが編入し。まるでアルヴィンやテンコ達の焼き直しと言わんばかりに、シドに鍛えられる。先輩となり後輩たちに見られる、新たな日々が始まりを告げた。

 

 ・・・と思っていた。その日々が続く筈であった。しかし、運命の口火は切られる。魔王に対抗する為、西の大国であるドラグニール帝国が王国に属国になることを求め。三大公爵の裏切りもあり、あっという間に要衝の砦が陥落し王国とアルヴィンは丸裸にされてしまったのである。

 

帝国の兵士たちが握るは禁忌の邪法により創り出された無機質なる妖精剣。使者である皇子、ウォルフの傍らに仕えるはシドと同等の騎士である「白騎士」。余興として一年に一度の祭りの中の最強の騎士を決める祭典での勝敗で全てを決める事を一方的に飲まされ。挙句の果てに、ウォルフの挑発に乗ったアルヴィンが決闘に応じてしまい、その最中、彼女が女であると言う事実は衆目に晒されてしまう。

 

「本当に、それでいいのか?」

 

「命じろ、騎士に」

 

「お前の本当の意志は・・・・・・目指す先はどこにある?」

 

 もう王にはなれぬと心折れ、この国の為に身を捧げようかと追い詰められるアルヴィン。しかし、その心をシドは容赦なく抉り出す。後はオマエの意志次第だと、乱暴なまでに背を押す。

 

例え自分が女だとしても。この国は、民の幸せは譲れない。なればこそ戦う。今度は自分の我儘でシドに命令を下し。プリーツェ学級の者達もまた、彼女の元へ跪く。

 

役者は揃った、反撃の為の命は為された。ならば最早、負ける道理は何処にもなし。気取った貴族や白騎士の正体であったエンデアに負ける可能性、万に一つもあらず。その本気を遠慮なく解放し、正に迅雷が如く祭典の舞台を駆け回り。本物の力を見せつけていくシド。

 

『汝等が崇め、仕えるものは何か⁉ カビの生えた古き王冠と玉座か⁉ それとも―――未来を切り開かんと剣を取る、王の魂の輝きか⁉』

 

 その彼を従えるアルヴィン、迷いなく立ち民を見つめるその姿、正に聖王が如く。外野の声を跳ね除け、その立ち仕草と魂の輝きに。諸人が魅せられ、王国が彼女の元へ跪く。

 

だが、何たることか。勝負の輝きに水を差すかのように、教団による魔王復活の儀式が幕を開ける。その中心でエンデアは。禁忌の妖精剣に魅入られ全てを吸い取られ、その全てを吸収した剣が集うその場でアルヴィンへと衝撃の真実を告げる。

 

一体、彼女は本当に何者なのか。この王国の闇とは何か。

 

次巻、いよいよ決戦が始まる。それを刮目してみるしかないのかもしれない。

 

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