読書感想:妹さえいればいい。14

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突然だが画面の前の読者の皆様は主人公になりたいだろうか。皆様の胸の中にはどんな夢が息づいているだろうか。

 

足掛け五年、十四冊続いたこのシリーズもいよいよ最終巻。

 

刮目して見てほしい、ここにいるのは誰もが主人公である。

 

現実の辛さに心折れ迷走する主人公がいた。編集者として夢を叶え自らの道を邁進する主人公がいた。己の理想と持論をぶつけながらも出版の未来を憂う主人公がいた。あの日破れた夢を取り戻す為、空を見上げて努力を続ける主人公がいた。

 

そんな彼等に負けじと、スランプから自らの力で立ち上がり自分の本当の想いを取り戻した主人公がいた。何を隠そう、我らが主人公である伊月である。

 

そんな彼が不器用で歪、だけど真っ直ぐな情熱を叩き込んだ一冊のラノベと言う名の弾丸。その題名は、アニメも視聴済みの読者様には懐かしく、そして感嘆の息が漏れるであろうあの題名。

 

ぬるま湯のような日向から引きずり出し創作の沼へ引きずり込み、枯れかけた心の炎にこれでもかと燃料をぶち込むその一発を受けたのは、彼のヒロインであり最高の好敵手である那由多だ。

 

そう、この作品は群像劇だ。だけどいつも皆の真ん中、事態の中心にいたのは彼等二人だ。好敵手として切磋しあい、恋人として睦み合った二人なんだ。

 

いつだって誰かの物語は誰かを引き込み変えていく。それはまるで主人公としての力がぶつかり合い敗者の心を折り導くように。

 

だからこそ、伊月は最後に叫んだのかもしれない。

 

「かかってこい」

 

主人公もモブも、アンチもファンも皆纏めて。ここにいる羽島伊月という主人公として。

 

誰かの心へ、まるで紙面を飛び越えて読者の心へ届けと言わんばかりに。

 

それは今まで酸いも甘いも嚙み分けてきた彼だからこそ辿り着けた境地。

 

だからこそ画面の前の読者の皆様よ、挑め彼に。足掻け何かに対して。挑戦せよ、己の前に立ち塞がる何かに対して。

 

きっと彼等は乗り越えた先、道の先でよく来た、だけどこれからだと言わんばかりに笑顔で待っていてくれるはずである。

 

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