読書感想:強すぎて学園であぶれた俺。ボッチな先生とペア組んだら元王女だった

 

 さて、二人一組を作ってください、という学生時代の、授業での呼びかけ、そんな呼びかけを苦痛に感じられた事のある読者様はどれだけおられるであろうか。コミュ障な人間には、元々周囲と合わない人間には辛い。そんな経験をされた事はあるであろうか。そんな経験をされたと言う方は、担任の先生とコンビを組まれた事はあるであろうか。

 

 

とりあえず現状、私はそのような経験はない。そしてそのようなコンビを組むのは、せいぜい小学生くらいまでであろう。ではこの作品は、どんな作品なのかというと。文字通りタイトルそのまんまなストーリーなのである。

 

「まずなによりも私がナインくんに学んで欲しいのは、『曖昧』です」

 

 

万民平等が叫ばれる新時代。戦場で生まれ育ってきた、元々は棄民と呼ばれた少年、ナイン。とある学び舎への入学試験、戦闘技能を示せと言うその内容の相手に、いきなり絡んできた貴族令嬢、マリシーヌ(表紙右)に指定されるも、戦場育ち故の野蛮にも程がある方法でマリシーヌをぶっ飛ばしてしまい。 周囲との温度差で浮いた存在となる中、声をかけてきたのは担当教師でもあるアイシア(表紙中央)。戦場育ち故、何も知らぬある意味無垢な彼に、まず『曖昧』という事を学んで欲しいと言ってきて。死んでいった仲間の夢をとりあえず叶えてみるか、というスタンスの彼に、自分だけの夢を見つけてほしいと言われ、彼はぼんやりと己の夢を考え始める。

 

その最中、演習で魔物に追われる、光魔法が使えぬ僧侶、ヘレン(表紙左)を彼女の友人ごと助けた事で仲間に加え、更に部屋に引きこもっていたマリシーヌも仲間に引っ張り込んで。決して仲が良いとは言えぬ、けれど一応纏まった、友人で創ったチームと言うものを形成する。

 

 

だが、その先に明らかになるのはアイシアの抱えた事情。元王女であり聖女でもあり、魔王討伐に駆り出される事が決定している彼女が抱えている事情。

 

なればどうするべきか。魔王に偶々遭遇してぶっ飛ばして、更にはアイシアが本当に抱えていた悩みまで引きずり出して、その上で全部背負って叶えてしまえばいい。

 

「たまにはいいだろ。偶然降りかかる不幸なんて星の数ほどあるんだから。一つくらい幸運があったって」

 

偶然降りかかる不幸、それは偶々背負わされた聖女と言う役割も含めて色々あるかもしれない。だけど、彼と出会えたという一つくらいの幸運で。無理やりにでも軌道修正して、全部纏めて幸福へと落とし込んでいくのである。

 

ハードボイルドに見えてコミカル、くすりと笑えるファンタジーであるこの作品。くすりと笑いたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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