読書感想:剣聖女アデルのやり直し1 ~過去に戻った最強剣聖、姫を救うために聖女となる~

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様はもし、一度だけ過去に戻ってやり直せるとしたらどの辺りに戻る事を望まれるだろうか、歴史の修正力、というものと戦わねばならぬとして、どの辺りの時代からやり直してみたいであろうか。その答えはセンサー万別、もとい千差万別であるので明確な正解はないとして。この作品はタイトルからも分かる通り、そういった作品なのである。

 

 

「後悔をしているの?」

 

かつてとある異世界を北国同盟と南邦同盟に分け世界を巻き込み襲った、未曽有の戦果。その終結の立役者となった英雄、盲目の剣聖、アデル。だが英雄と呼ばれた彼の心には一つ、消えぬ後悔があった。それはかつて自分を剣闘奴隷という立場から救い出してくれた主君、ユーフィニアを守り切れなかったという事。主君の仇への怒りで暴れ回るも、和平を望んでいた主君は喜ばない。無念と後悔の中、彼に声を掛けてきたのは「見守る者達」の意思を名乗る存在。その存在に願いを聞かれ主君との再会を願った事で彼は、主君と出逢う五年前の時間軸へと舞い戻る。

 

再び見える目、それで見るのはある意味懐かしき剣闘奴隷としての舞台、移動式コロシアム。が、しかし。予想外の事態が一つあった。彼は何故か女性に性転換(表紙)していたのである。驚くも一先ず飲み込み、手始めとばかりに彼は牢屋の看守を討伐し脱走を試み。一周目の世界の恩人であるマッシュとその仲間達と共に脱獄を試みる中、聖女に使役される神獣が一体、ケルベロスとユーフィニアの死の原因となった者の一人、大聖女の一人であるエルシエルと遭遇する。

 

ケルベロスと契約を交わし、ここであったが百年目と言わんばかりに戦いを挑むが、最初の戦いは微妙な決着に終わり。移動式コロシアムを湖に沈め、ユーフィニアの元を目指す中で一周目では既に死んでいた護衛騎士、メルルと遭遇し。マッシュたちと共に自分達を傭兵であると偽り、強力な魔物に挑まんとしていた彼女に自分達を売り込み。エルシエルに使役される神獣の一体、玄武と遭遇するアクシデントもありながらも功を為し。何とかユーフィニアと再会し、彼女の元に留まらんとする。

 

と言いたいが、そうは上手くは行かなかった。その理由とは、アデルが女性になってしまった事で身に着けてしまった「聖女」の力。聖女は須らく教会に属さねばならず、まずは聖女としての認定を受けねばならず。不満を乗り込みつつもアデルは、聖女としての修業をする事になる。

 

だがやはり、彼女の前に敵は待っていた。修行の最終段階で現れたのは、殺したはずのエルシエル。彼女は突如牙を剥き、今度こそユーフィニアを守る為にアデルは激突へ向かう。

 

「見た目通りの飼い犬だ! ただし、ユーフィニア姫様専用のな!」

 

エルシエルの手により仕組まれた妨害、その差は圧倒的。そこへ介入する「見守る者達」の総意。 その意に気付き、己が女性に変わった意味を知る時。本当の意味でアデルは覚悟を解き放つ。女性だから、聖女だからこその一周目の人生では決して持ち得なかった力を。

 

TSファンタジーとして王道を突っ走りつつも、真っ直ぐな護衛としての誓いが熱さを齎しているこの作品。熱めなファンタジーを読みたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

剣聖女アデルのやり直し 1 ~過去に戻った最強剣聖、姫を救うために聖女となる~ (HJ文庫) | ハヤケン, うなぽっぽ |本 | 通販 | Amazon