前巻感想はこちら↓
読書感想:ひだまりで彼女はたまに笑う。 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、同級生ヒロインとの一から、それこそゼロから始めていくラブコメと言うこの作品は、今の世の中においては異端、若しくは一周回って新風と言っても過言ではない、というのは前巻の感想を書いた時に説明したであろう。ではそんなラブコメの二巻である今巻は、どう展開されていくのであろうか。
今のラブコメの流行である、まるで日進月歩のような勢いでどんどんと関係が進展していくような、そんな流れを予想された読者様、先に申させていただくが、その予想は大外れであると先に申させていただきたい。伊織と楓、二人のラブコメの深まる速度はまるで牛歩のよう。少しだけ心近づき、思いを巡らせていても。未だ二人は手探り状態、故にそう簡単には近づけない。
しかし、そんな形も古のオタクであられる読者様が画面の前におられるとしたら、どこか懐かしく、心地よく感じるかもしれない。一歩ずつ、着実に。それもまた、ラブコメの根底にある古き良き王道の形なのである。
前巻の最後、楓が無くした猫のストラップを共に探した事で、ふとした仕草や不意の笑顔から雪解けを感じ。更に思いは深まり、大きくなる。伊織の心の中、あわよくば恋人同士になりたいと言う欲望。その一歩として、まずは名前で呼び合いたいと愛猫であるコタローを練習台に名前で呼ぶ練習をしてみたりして。
「あだ名をがんがん派生させないで!?」
相も変わらず続く、楓との打てば響くかのようなやり取り。そんな中、季節は進んでいく。高校生らしいイベントは積み重なっていく。
テストを前に皆で勉強し、楓がコタローにメロメロになったり。
皆で繰り出した夏祭り、花火の下でふと手が触れあって、そのまま繋いでみてしまったり。
「いっしょにいると、落ち着く・・・・・・」
そんな中、楓の心の中で何かが変わっていく。言葉に出来ない思いが芽生え、大きくなっていく。今は未だ、「恋」とは言えぬのかもしれないその感情。いっしょにいると落ち着く、それだけは確か。でも、それだけじゃいられなくなる。小さなことからこつこつと、一つずつ大切な欠片を積み重ね。もう少しだけ、という思いは芽生えていく。
それこそは恋の始まり。今は未だ名もなき感情が、どんどんと隠せなくなっていく。そんな繊細な描写と積み重ねが初々しく、だからこそ愛おしい。
そして、牛歩で一歩ずつな恋だからこそ。この作品は、真っ直ぐに心を打ってくるのである。
前巻を頼まれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
ひだまりで彼女はたまに笑う。2 (電撃文庫) | 高橋 徹, 椎名 くろ |本 | 通販 | Amazon