読書感想:ナメてるお嬢を俺がわからせた

 

 

 さて、この世の中には「わからせ」、というジャンルがある訳だがわからせ、とはそもそも何なのか。生意気だったり気の強い異性の心を折り、自分の方が上位であると知らしめて、負けている異性に対して興奮を覚える事、でいいのだろうか。そんな話はまぁいいとして。この作品では題名にもある通り、わからせ、という言葉が使われてはいる。ではこの作品ではどんなわからせが起きているのだろうか?

 

 

その方向性についてはここから見ていくとして。この作品にもう一つぴったり、と言える言葉がある。それは「割れ鍋に綴じ蓋」、という言葉である。正反対に見えて犬猿の仲、に見えて。実はお互いお似合い、という関係性である。

 

「どいつもこいつも頭も股もゆるゆるなビッチばかりで、この俺様に相応しい純粋無垢な女なんてどこにもいやしない」

 

現役W大学二年生、天が何物も与え過ぎた男、王子。成績優秀、容姿端麗。性格は唯我独尊。しかし彼はモテない。正に自分以外は全て下、的な性格と度を越した処女厨なせいで。幼馴染である道一にも呆れられる中、聞こえてきたのは「文芸部の姫」の噂。

 

「どいつもこいつも頭も顔も悪ければ金すらなさそうで、この私に相応しい高スペックイケメンの気配すら感じられない」

 

その人物こそ、三姫(表紙)。まさに「奇跡」と言わんばかりの造形、しかし内面割と最悪。常に男性を見下し、マウントを取る事だけを考え、自分こそが上と信じて疑わず。

 

「君は処女か?」

 

その初遭遇は、王子のいきなりの口説きに三姫が反応しかけるも不用意な一言が決裂を招き。だが道一の彼女である七海の策略により、何故かダブルデートする事に。

 

思いとしては不本意、行きたくもない、その筈だった。しかしデートの中、三姫は王子の本当の姿を見ていくことになる。クズと周りから言われるけれど、実は真っ直ぐで紳士的。世界を敵に回す、としてもそれがどうしたと言わんばかりに真っ直ぐに立てる精神性を。

 

それは正に、威風堂々とした覇王であるかのよう。他の男とは違う、という部分を否応なく感じ。王子の妹でありヤンデレ気質の引きこもりである真白と激突したり。王子という人間が、どんな生き方をしているのか、という部分を垣間見る事となったり。

 

「俺はお前と違って―――『天才』だからな!」

 

そんな彼の在り方から、目を離せなくなっていく。そんな彼女を、王子側から見て、言えることはできる。それは「奇跡」であっても「天才」にはなれぬということ。そんな歪な生き方しか出来ぬ、ならば何をすべきか。助けられるのは自分だけ。だからこそ真っ直ぐに手を伸ばし。くずとビッチの伝説が始まるのだ。

 

皆が皆、裏めいた顔が合って。そんな中で繰り広げられる会話劇が刺さってくるこの作品。コメディがきちんとあるラブコメを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: ナメてるお嬢を俺がわからせた (ファンタジア文庫) : 大空 大姫, 緋月 ひぐれ: 本