読書感想:コンビニ強盗から助けた地味店員が、同じクラスのうぶで可愛いギャルだった

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 さて、「孝行のしたい時分に親は無し」なんて言葉がこの世の中には存在する。この言葉通りなのかはひとまず置いておくとして、誰かとの死別と言うのはいつも急に訪れるものである。誰もがいつかは死ぬ、とは分かっていても。例えば不意の事故等で急に誰かと死に分かれる事だってある死、急病等であっけなく、ぽっくりと死んでしまう事だってある。

 

 

そんな時に大切なものとは何なのであろうか。それはきっと、「寄る辺」というものなのかもしれない。誰かが心の支えとなってくれるのならば、それこそが心強いものである。

 

 つまりどういうことかと言うと、この作品はその「寄る辺」というものが重要な要素となる作品である。この世界に独りぼっち同士の二人が出会い、惹かれ合うお話なのである。

 

両親を事故で亡くし天涯孤独、更には心の支えとなっていた幼馴染、晴乃に告白したら異性としては見れないとフラれ、自暴自棄になり自殺を決意した少年、リク。

 

「今日から、あたしの家に・・・・・・泊まる?」

 

そんな彼の元に、まるで運命的に現れた出会い。偶々立ち寄ったコンビニで強盗に遭遇し。やぶれかぶれで救った相手は学校で一番モテるギャル、彩奈(表紙)だったのである。

 

家を飛び出してしまい帰る事も出来ず、最近ストーカーに悩まされる彩奈の願いにより彼女と同居することになり。一緒に自転車に二人乗りをしたり、何気なく一緒に出掛けたり。

 

何でもない日々が積もり、日々は確かに色付きだす。まるで似た者同士な空気を感じたかのように、惹かれ合っていくリクと彩奈。何気ない日々の中、お互いが段々と特別ない相手になっていく。

 

 しかし、そこへ晴乃が迫りくる。失って初めて自覚してしまった恋心を抱え、周回遅れを埋めようとするかのように迫りくる。そして、彼女だけは知っていた。彩乃とリクの間にあった、本人達も知らぬ運命の悪戯的な「因縁」を。

 

家族を事故で亡くしたリク、家族を自殺で亡くした彩奈。その間に横たわっていた因縁はあまりにも重く、彩乃は離別を決意し、リクは彩乃の事を忘れようと努めていく。

 

 だけど、忘れられない。忘れるな、その思いと胸の中の思いが叫ぶ。

 

「きっとリクちゃんなら大丈夫だから」

 

今、彩奈を救えるのはリクだけ。だからこそ行け、と失う事も厭わずに晴乃はリクの背を押し。リクは迷わず飛び出していく。

 

 痛々しい程に鮮烈に、何処か切ない思いが交わるこの作品。ラブコメ、否、ヒューマンドラマ。故に普通のラブコメとは何味も違う面白さがあるのである。

 

鮮烈な作品を読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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