読書感想:美少女とぶらり旅

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 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。皆様は突然、旅に出てみたくなった事はあられるであろうか。何もかも、面倒くさい事を放り出して突然行ってみた事もない場所へ向かってみたくなったことはあられるであろうか。今の世の中の情勢では、中々難しいことかもしれないし大人になるにつれて、中々放り出せぬものが増えていくと言ってもいいかもしれない。しかし、いつの日かそんな旅をしてみたいものである。

 

 

「旅に出たい」

 

窮屈な日常が面倒くさい、柵もまた面倒くさい。そんな窮屈な状況と、進路を巡る両親との喧嘩で嫌気がさし。東京に住む少年、翔は動画投稿サイトで稼いだ金と荷物を片手に家を飛び出し、旅に出ようとする。が、その旅が始まろうとする中。駅のホームで目撃したのは、級友である美少女、涼帆が自殺しようとしている現場。

 

「旅に出よう!」

 

 衝動的に引き留め自殺を阻止し、翔はどうするのか。彼は涼帆を強引に、半ば口説き落とすように説得し、旅へ誘う。そんな彼の姿に、最後の気紛れと言わんばかりに涼帆も同調し。二人は連れ添って旅へ出る。

 

当てもないまま、何処までも自由に。それこそ何処へでも、と言わんばかりに。熱海から富士山、更には浜松へ。心の向くまま、気の向くままに。まるで糸の切れた凧のように、あちらへこちらへふらふらと旅をする。そんな中、二人は旅先で一期一会と言わんばかりに、様々な出会いの機会に恵まれていく。

 

「失敗ってそんなにダメな事なの?」

 

熱海で出会った留年三回の高校生、瑠花に問われた一言。失敗を続けていても尚、何処までも前向きな彼女の言葉が涼帆の心を揺らし、答えを奪う。

 

「私のようなつまんない大人には、くれぐれもならないでね」

 

浜松で出会った、東京のOL、奏。自分達の歩む先にいる彼女の言葉、そして心に秘めていた激情が奏でた音が、涼帆の心を揺らす。

 

 そして雨の中、涼帆が秘めていた心とトラウマが翔に晒される。誰からも望まれず、居場所すらもなく。翔には帰れるところがある、だからこそもう帰るべきと、彼女は彼を突き放す。

 

「・・・・・・死にたく、ない?」

 

だけど、死のうとしたのに死にきれぬ。今までの道程が、彼の笑顔が己の心を引き留める。

 

「この広い日本の中から七瀬を見つけ出した。それが、俺が七瀬を好きという何よりの証明じゃないのか?」

 

「もうしばらく、一緒に旅を続けて欲しい。絶対に、信じさせるから」

 

「俺は七瀬が必要なんだ、この世界で何よりも」

 

 そして、天文学的確率を飛び越えて駆けつけた翔は、世界の中心でアイを叫んで見せる。一年分の思いを込めて、キミとまた旅をしたいと必死に叫ぶ。

 

それは青臭い叫び、けれど涼帆の心には何よりも必要だったもの。

 

だからこそ、またここから。問題は山積みだし先行きもどうなるか分からぬけれど。また始まるのである、一先ずは名古屋に向けて新しい旅が。

 

実際の観光地をリアルに巡る臨場感の中、青臭くて瑞々しく、真っ直ぐに熱い恋の波動が迸っているこの作品。

 

正に最高、正にエモくて悦い。最高に面白いと太鼓判を押したい次第である。もっともっと、この旅が続くようにと願いたい。

 

クーデレなヒロインが好きな読者様、ぶらり旅が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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