さて、この世の中には「適材適所」という言葉がある。自分が最も力を発揮できる場所で力を発揮するこそが幸せであると言うのなら、それが出来ていない人はどれほどおられるのだろうか。そんな方々が、己の実力を最大限発揮できる場所で輝けることを祈る次第である。では、そんな場所に出会う機会と言うのは何処にあるのだろうか。それはきっと、自分の足で探すしかないのかもしれない。
とある異世界のとある帝国、ハ・ルーン。通称ルーン帝国と呼ばれるこの国は今、斜陽の黄昏の時を迎えていた。内部を佞臣と腐敗した宗教の坊主共に食い荒らされ、外部を迫り来る敵に食い荒らされる。正に内憂外患、滅びゆく最中。
そんな国の都のとある大衆食堂である日、運命的な出会いと全ての始まりの時が訪れる。国に不満を持つ三人の男が出会った時、奇跡は幕を開けるのだ。
国に不満を持つ大商会の三代目、セイ(表紙右)。戦争に不満を持つ皇帝、ユーリ。戦争に疲れた将軍、グレン。共に相席し不満をぶつけ合い、何も変わらぬ筈だった。
「それができると言ったら、そなたらはどうする?」
しかし、ユーリの家に伝わる幻覚の魔法が不可能を一転させる。ユーリの提案に乗り、それぞれをそれぞれと誤認させる幻覚を用い。セイは皇帝、ユーリは将軍、グレンは商人へと。秘密を知る僅かな協力者を作りつつ、三人はそれぞれの立場を入れ替えたのである。
そしてそれぞれの場で、三人は今までには見えなかったものを見つめ、新たな戦いへ挑んでいく。
皇帝となったセイは宮廷内に蔓延る佞臣と宗教へと戦いを挑み。元はユーリの側近であったミレニア(表紙左)を振り回し、暗愚な皇帝を演じながらも改革の種を仕込み。
戦場の最前線に立ったユーリは、自らの魔法も用い奇跡を演出し。副官でありミレニアの妹であるエファを便利に使いながらも戦場の掌の上で躍らせ。
市井の生活、その平穏の中に潜ったグレンは、今まで見えなかった腐敗の原因を見つめる。
この国を倦ませているもの、それは宗教。腐敗した生臭坊主共の支配するそれを排除しなくては、内憂の排除はままらなぬ。だからこそ、セイは策を練り、ここぞとばかりに発動させる。最初から仕込んでいた、深謀遠慮の輝く策を。
「そりゃ悪いことばっかやってるから、神に見放されたんじゃないんですかねえ」
不運と見せかけた、仕込んでいた策でセイは教会の連中を躍らせ。ユーリは軍を率いて鎮圧し。そしてグレンは只人として剣を振るい、畏れられた力を振るう。
燻っていた才とセンスを目覚めさせ、新たな場所で輝かせる。そんな爽快感のある物語であり、一本芯の通った安心すらできる王道ど真ん中な熱さと面白さのあるのがこの作品である。
故に、この作品は面白い。是非とも万人に読んでみてもらいたい。
内政もの、無双ものが好きな読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
ルーン帝国中興記~平民の商人が皇帝になり、皇帝は将軍に、将軍は商人に入れ替わりて天下を回す (GA文庫) | あわむら赤光, Noy |本 | 通販 | Amazon