読書感想:孤高の華と呼ばれる英国美少女、義妹になったら不器用に甘えてきた1

 

雲はわき 光あふれて。この一節から始まる歌を聞いたことのない画面の前の読者の皆様は、多分おられないであろう。そう、「栄冠は君に輝く」。言わずと知れた全国高校野球甲子園の歌である。この曲はよく、深く聞いてみるととても深い曲である。勝者だけではなく、敗者にも、ではなく。すべての試合、大会。そこに関わった人すべてに栄冠は輝く、そういう曲なのである。かの曲に関する話はとある朝の連続テレビ小説で触れられたりしている訳であるが。

 

 

そんな夢も希望もそこに在る大舞台、全国より勝ち抜き集った強者たちが夢を賭けて躍動するのは夏の風物詩とも言えるだろう。テレビで中継されていたら、つい見てしまうと言う方もおられるかもしれない。この作品はそんな、部活というのも前面に関わってくるお話なのだ。

 

「私にとって、あなたより勉強が大切なの」

 

強豪校の野球部に特待生として入部し、確かな実力とたゆまぬ努力で周囲からの信頼を集める少年、賢人。彼がある日、親の再婚により新たに妹が出来る事になり。その妹というのがソフィア(表紙)。よりにもよって高校の同級生であり、クールで人を寄せ付けぬ事から「孤高の華」と呼ばれる美少女。当然、いきなり家族としてうまくいく訳もなく。何故かつんけんしている彼女に取りつくしまもなく。関係はどこかぎこちなかった。

 

「素敵だと思うわ」

 

しかしそこで諦めていてはメタ的な話にはなるがこの作品、始まらない。そして努力が出来る賢人が諦める訳もなく。何とか仲良くなろうと話しかけ。そんな中、自分の夢を話したら彼女から予想外の反応を引き出すことに成功し。そこから二人の関係は、少しずつ動き出していく。

 

ソフィアからすれば、彼の事は実はとある大会で活躍を目撃していて、気になっていた相手。しかし何処か軽薄そうな見た目に、まるで人に懐かぬ野良猫のように警戒感を抱いていた、という事。

 

「努力を続けたら、結果が出たんじゃないのか?」

 

そんな二人に共通するのは、「努力」という一点。賢人は野球、ソフィアは勉強。打ち込むところは違えど、積み上げるものは同じ。それが分かるからこそな賢人の言葉に、少しずつ絆されて。賢人の中でも少しずつ、自分しか知らぬ顔が増えてきた事で意識する要素も出てきて。

 

『ちゃんと、覚えていてくれる人がいたよ』

 

二人だけでのお留守番、ギャルに絡まれていたのを助けた事、そして二人でお出かけした事。そんな些細な事を積み上げて、二人でキャッチボールするくらいには仲良くなって。そんな中、ソフィアが知るのは二人の出会いはまるで運命のようなものだった、という事。賢人の憧れが、ソフィアが忘れられぬ人に繋がっていたと言う事。

 

その事実を知り改めて意識して。ここから彼女の方が動き出していくのである。

 

部活、そして家族。ネコクロ先生の作品として新たなアプローチがされていて、だけどその根底のラブコメは変わらず温かいこの作品。じれったくて甘いラブコメを見てみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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