読書感想:剣と魔法の税金対策3

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前巻感想はこちら↓

読書感想:剣と魔法の税金対策2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、まずは画面の前の読者の皆様に歴史の問題を一つ、出題してみようと思う。それでは問題。江戸時代末期、日本が鎖国を解き開国に向かっていた時代。日本が諸外国と結んだいわゆる「不平等条約」において、この作品に関係のありそうな条文とは一体何であろうか?

 

 

歴史の授業を受けられたことのある読者様であればもうご存じであろう。答えは「治外法権」、ではなく。「関税自主権」である。関税を自由に決められなければ、貿易で不利益を被るだけである。かつて日本はこんな不平等な条約を結んでいた訳である。

 

 では一体、そもそも関税って何なのか? そんなにニュースの話題にもならない、けれど大切な税金であるこの税金は一体、どんな税なのか? そこに焦点を当て、触れていくのが今巻なのである。

 

さてここで思い出していただこう。この作品、魔族の国という内輪の中でストーリーが今まで展開されていたが、そもそもメイとブルー、そしてクゥの生活する国は「国」である。そして国家の運営は、国の中だけでは成り立たない事の方が多い。

 

 国家を潤すには内政だけではなく、外国から外貨を獲得する事もまた、重要な事なのである。その為に必要な事は何か。それ即ち、貿易である。

 

その為には特産品が必要である。その為に興した魔族と人族が共同で行う産業振興計画。目玉となるのは、不思議の妙薬の原料、マンドラゴラ。

 

・・・そううまくいけば簡単である、しかしそうは問屋が卸さない、というのは物語の常であろう。横やりを入れてきたのは、高級マンドラゴラの生産で儲けるエルフ達。その代表としてやってきたエルフ、デュディにメイが喧嘩を売ってしまった事で、余計に拗れてしまう交渉。

 

再び交渉を行う為、向かう先はボストガル。国家連合が定めた、他種族との交易の窓口となる交易都市。ここで悪評を流されてしまっては元も子もない。急ぐクゥ達。

 

 だがしかし、彼女達は未だ知らない。この交易都市で何が待っているのかを。マンドラゴラの栽培と交易に、どんな闇が隠されているのかを。

 

「お金の流れが、消えているんです。関税で得たお金が、誰の手にも渡っていないんです」

 

富を得ようとしながらも、その富を害そうとする。矛盾した行いをするデュディの抱える苦い思い。

 

謎の美女、ノーゼ(表紙右)の力を借り閲覧した資料に隠されていた真実。

 

そして、まだまだ未熟であるが故に危なっかしいクゥを見かね、職務を越え手を貸す我等が税天使、ゼオス。

 

 関税に絡むのは何か。それは忸怩たる思いを抱えた者達の思い。誰かの悔恨、そして誰かを想う心。

 

その全てはこの巻の中に。それは是非、皆様の目で見届けてほしい。

 

前巻を楽しまれた読者様、やっぱり税について学びたい読者の皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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