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読書感想:義妹生活2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、今巻は担当編集者の方と動画担当の方に「神回」と明言されているらしい。正にその通り、今巻は神回と言えよう。一体今巻では何が待っているのか。その全ては、実はタイトルに込められている。
「義妹生活」。義妹としての生活、それはまだ、実は始まっていないと言えよう。何処か不安定で不確かで、恋愛未満の思いをお互いに向け合う悠太と沙希の二人。そんな二人は、夏休みに新たな関係をそこに加える事になる。
それは、バイト先の先輩と後輩という関係。沙季が悠太のバイト先に応募してきて採用された事で、二人の関係は新たな色を加え、更に二人で過ごす時間が増えていく。
ある時は悠太が沙季を助け、彼女が今まで自分の知らない一面を見たり。またある時は、悠太の先輩である栞と沙季が軽くぶつかり合ったり。
そんな場面もありつつも、あらゆることに全力で頑張る沙季。様々なものを抱え込み、それでも何も捨てようとせず。自縄自縛の状況に追い込まれていく彼女を心配する悠太。
「あの子の真面目で自分に厳しい、甘えられない性格は、いつかあの子自信を壊してしまうかも」
栞に示された最悪の可能性。干渉すべきか、それとも放置すべきか。その果てに関わる事を選び、友人達も誘ってプールへ行こうと沙季に提案する悠太。
何だかんだと理由をつけながらも、揺れ惑う二人の思い。その先、結果的にはプールへの同行を了承する沙季。その行動こそが、全てを変える鍵。そしてそれを先制するかのように蓋をするのが、沙季の一つの決意と行動。
何気ない彼女の仕草に、恋に落ちる音がした。目を離せなくなる輝きがあった。
だが、沙季は決意する。彼への思いに蓋をする事を。彼の「義妹」となる事を。
一歩を彼が踏み出したのなら、間違いなく自分は崩れてしまう。だからこそ自分に言い聞かせる。自分は「義妹」なのだと。自分の想いは「義妹」としての思いなんだと。
「兄さん」
かつてここまで、万感の思いが込められた、けれど心を切り裂くような切なさが込められた、たった三文字があっただろうか。
その決意と選択は、果たして本当に正しい事なのだろうか。
本当に、二人とも共に恋心に蓋をする事なんて出来るのだろうか。
自分の心を偽って、その心に蓋をして。見ないふりをして閉じ込めて。それは本当に、自分の心を守る事になるのか。心の崩壊を招くだけではないのか。
この先、どんな展開が待っているのか。それが楽しみにしかならなくなる今巻。
どうか画面の前の読者の皆様も、心して見届けてほしい次第である。
義妹生活3 (MF文庫J) | 三河 ごーすと, Hiten |本 | 通販 | Amazon