読書感想:隣の席になった美少女が惚れさせようとからかってくるがいつの間にか返り討ちにしていた4

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前巻感想はこちら↓

読書感想:隣の席になった美少女が惚れさせようとからかってくるがいつの間にか返り討ちにしていた3 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻の感想で表紙について言及したわけであるので、今巻もまた言及してみんとする。画面の前の読者の皆様、今巻の表紙を見てどう思われるであろうか。メイド服である。が、頭にはねじり鉢巻き、まるで一仕事やり切ったと言わんばかりのポーズ、その手にはたこ焼き。頭と体がミスマッチ、いったいこれはどういう状況なのであろうか?

 

 

その答えは、聡い読者の皆様であればもうお気づきなのではないだろうか? そもそも普通の学生がメイド服を着るとはどういう事態であろうか? 答えはそう、「学園祭」である。夏を越えて秋、二学期に来るであろう最初の大規模イベントであり、学園ラブコメものとしては大定番とも言えるイベント。

 

だが、新たなイベントは非日常だけではなく、新しい出会いの風をも連れてくる。転校生としてやってきた少女、萌絵。彼女は何を隠そう唯季の旧知の相手であり、彼女が憧れた上位互換、「本当」の意味での「隣の席キラー」だったのである。

 

唐突に現れた恥ずかしい過去を知る相手に振り回され、ペースを乱され。気が付けば、悠己の隣と言う場所も浸食をされ始め。それでも向き合う勇気が無くて向き合えず。

 

彼女は知らない。「本物」の彼女がどんな思いを抱いていたのかを。

 

彼女もまた、知らない。「偽物」と嘯く彼女が彼女を見て、何を思っていたのかを。

 

 すれ違い、誤解し、学園祭を舞台にした勝負へともつれ込み。その中、萌絵ともう一度向き合い、思いをぶつけ合い。唯季は大切なものへと手を伸ばす。その姿を見つめる悠己の心、浮かび上がる感情とは何か。

 

「俺なんて唯季の足元にも及ばないよ」

 

「俺は、太陽にはなれなかったんだよ」

 

それは憧憬。あの日なりたくて、けれどなれなかった理想の残滓。けれど彼にはなれなかった。自分は主役にはなれはしない。なれるのは、只道化のみ。例え言い訳に逃げるとしても、それこそが己の役割と自らに課して。

 

「悠己くんは太陽じゃなくて、お月さまって感じ」

 

そんな彼の心を唯季は悪戯っぽい笑顔と共に何気ない言葉で光で照らし。彼の中に浮かび上がるのは一つの願い。例えニセモノだとしても、このときをずっとという思い。

 

太陽と月は揃った、けれど二つの星は向き合わず、どこか切なくすれ違う。果たして、その想いを動かし、公転の軌道を変え歩み寄る事は出来るのか。

 

唯季の光が強くなり、何処か切ない恋路が光る今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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