読書感想:グリモアレファレンス2 貸出延滞はほどほどに

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前巻感想はこちら↓

読書感想:グリモアレファレンス 図書委員は書庫迷宮に挑む - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品のヒロインは今巻の表紙の一員を務める三火である、との事である。が、前巻では少し影が薄かったかもしれないのは前巻を読まれた画面の前の読者の皆様であればご存じであるかもしれない。では今巻では影が薄いのか、というとそうでもなく。ヒロインとしての面目躍如と言える活躍が光っているのである。

 

今巻は舞台作成と状況整理であった前巻とは違い、何本かの短編の集まりという連作短編集の形を取っている。その中で描かれるのは、外部利用者とのかかわりと、尊達のいつもの日常。時に貸出延滞を犯した者達の元を訪ねたり、時に年頃の男子の夢、猥本(要はエ〇本である)を求めて男子たちだけで合同部隊を編成して迷宮に潜ったり。

 

 まるでこれがいつもの日常だと言わんばかりに繰り広げられる、賑やかでもあり騒がしくもある日常。そんな中、迷宮図書館は新たな顔を見せ始め、明確な意思を見せ始める。

 

魔本に帰ってこいと告げるかのように、迷宮図書館からは貸出延滞されている本の元へと繋がり。迷宮図書館の一部である魔導書は貸し出され、迷宮になくとも魔本は貸し出された先で迷宮を創り出す。

 

 そんな魔導書と迷宮にとって、隠されたすべてを暴こうとする尊達はどう見えるか。その答えは簡単であろう。誰だって秘密にしている者を悉く覗かれるのは気分が悪い筈。故に迷宮は尊を「邪魔者」、「厄介者」と判断し明確な敵意を以て最強の刺客を送り込むと言う形で牙を剥く。

 

ヌシなんていない筈だった第六層。だが、そこに現れたのは尊とその仲間達が探索に訪れた時のみ現れるヌシ。超反応かと言わんばかりの神通力を自由に用い、達人級の拳法で襲い掛かってくる無貌の超人。インド哲学より生まれし、神にも近き圧倒的格上の相手。

 

ここで諦めれば、隊を解散してしまえば邪魔される事もないかもしれない。障害を取り払えるかもしれない。

 

「こいつが、僕達の道を塞ぐ邪魔者だ」

 

「なにがなんでもはっ倒すぞ」

 

 だが、自分はまだまだ彼等と共に歩きたい。叶えたい願いだってある。ならば、超人がなんだ。障害がどうだ。自分達にとってしか益が無い、だから誰の手も借りられない。それがどうした? 立ち塞がるならぶっ飛ばす。再び尊の心の中、あの日のように全てを魅了する炎が燃え上がる。

 

今はもう一人じゃない、頼れる仲間達だっている。自分達は三火のような強者にはなれない。だが、協力と連携、個体ではなく群体として戦いに挑むのであれば可能性は引き寄せられる。

 

前巻より規模は小さくとも、密度と熱さは更に上がった死闘。

 

「下っ手くそな督促しやがって。邪魔するなら、何度でも踏み砕く」

 

その先、戦いを生き抜いた尊へと迷宮は褒美を与える。求めよさらば与えられん、とでも言うかのように。

 

前巻よりもコメディチックに、けれど探索と死闘の熱さと面白さは変わらぬどころかギアを上げる今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様、探索ものが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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