読書感想:VTuberの幼なじみと声優の幼なじみが険悪すぎる

 

 さて、例えば永遠の友情、なんて言葉があるけれど実際友情、というのは永遠とは言えない、かもしれない。例えば環境の変化で疎遠になってそのまま関係消滅、なんて事もあるかもしれないし、ケンカになって仲たがいして、そのまま関係性消滅、なんて事もあるかもしれない。そんな危機を乗り越えて続いた友情は、何よりも得難いものかもしれない。この作品はそんな友情、幼馴染同士の絆を取り戻すために頑張るお話なのである。

 

 

学年でもトップクラスの成績を誇る少年、航。何故彼はそんな成績を得るに至ったか。それは幼馴染二人に置いて行かれたくないから。実力はあるが、アイドルとして自分を売る事が出来ないので人気はまだまだな、声優として活躍中の晴香(表紙左)。記念配信が同接十万人いく人気vtuber、バイオレット(表紙右)の中身、葵。二人は何故か最近、どこかぎくしゃくしていて。会話が減っていたり、顔を合わせなかったり。航とは関わってくれるも、航としてはまた三人で笑い合いたくて。晴香の手伝いをしたりしつつも、その方法を模索していた。

 

さて、何故2人はぎくしゃくしているのか。それは始まりは晴香が声優になった事。元々は葵が誘ったオーディションに合格した事で声優となるも、葵は落ちてvtuberの道に進み。お互いに羨望し、嫉妬し。航の傍に居る相手が羨ましくて、置いて行かれないようにと努力して。つまりはトライアングルな関係性と言う事である。

 

そんな中、航のお隣さんになった葵にゲームを教えようとしたら、その場面を晴香に見られて誤解されて。とあるvtuberに言い寄られる葵を助けようと偽彼氏作戦を考えたら、晴香に断固として止められたり。そんな中、晴香がずっと憧れていたアニメに出演する事になり、更に葵もゲストとして招かれて。航が設けたお祝いの場、二人で思いをぶつけ合って仲直り、更に友情の力で急なセリフ変更もあった収録も乗り切るも。晴香が声優としてのアカウントで葵の配信にコメントしてしまった事が視聴者の邪推を招き。言い寄ってきていたvtuberが余計な誤解を誘導する油を注ぎ、二人は炎上の危機を迎えてしまう。

 

「ありがとうございます。上手くやってみせます」

 

それは航にとっては何よりも許せぬ事。ならばどうするか。航が打ち出した一手、それは事務所の大人達も驚かせて巻き込む大胆な、博打とも言える一手。敢えて相手をコラボに誘い出し、相手の悪評をそれとなく視聴者に伝えて矛先をそちらに向けると言う一手を成功させ、見事に事態は収まって。

 

「そうなんだけど、葵には負けたくないから」

 

「うん、晴香には負けたくない」

 

その先に、これからもこの家族のような関係を、と望む航の知らぬ所で。晴香と葵の「ライバル」関係は始まっていくのである。

 

決して負の感情ばかりが巡る訳じゃない、幼馴染同士だからこそのトライアングルが光るこの作品。三角関係ものが好きな読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

 

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