読書感想:かつて人だった貴方へ 2.次に出会う世界でも

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:かつて人だった貴方へ 1.最果ての魔女と葬送士 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で全ての魔物がこのダンジョン内で死した人間、という負の無限ループがあるという事が明かされたこの作品であるが、先に言ってしまうと今巻で最終巻、一先ずの決着がつくわけであるが。探索の常として、呆気なく奪われてしまった仲間であるアリスレインの命。そして迷宮内でその命を奪われたという以上、彼女もまた魔物と化しているという訳であり。迷宮のその先へと潜る以上、彼女との邂逅は避けられぬのである。

 

 

「私も信じてないんだけど―――『竜』が出るって」

 

探索を進めようとしているシオンたちの元に飛び込んできた不可解な噂。それは迷宮の三層『偽竜鱗湖』に竜を見た、というもの。本来ならばリザードマンが生息しているそこに竜が現れる筈もなく、無論シオン達は竜に挑むには力不足であり。調査を依頼された高位冒険者、クレアドールのサポートという形で調査に向かう事となる。

 

「・・・・・・アリスレイン?」

 

高位冒険者たるクレアドールのその隔絶した実力を見せつけられ、舐められっぱなしではいけないと不死者となったリザードマンを率いる竜と戦う事となり。その先に見つけたのは、クレアドールの一撃も効かぬ青い竜。その竜に連れ去られたシオンは、何故か敵意もない様子のその竜に彼女の影を感じ取る。そう、この竜こそがアリスレインであったのだ。

 

その場へ追いついたクレアドールから彼女を逃がすために立ち塞がり、何とかアリスレインは逃げ出すことに成功し。探索はひとまず終われど、やはり問題は残る。

 

そう、今のアリスレインは竜であり魔物である。それ即ち、打倒し葬送するべき存在に他ならぬという事。そして調査を任されたクレアドールにとって彼女は、倒すべき敵。無論冒険者としては、討伐こそが正しいのであろう。だが、何故かその手は動かない。シオンはやはり戸惑い、どうすればいいのかという悩みに嵌ってしまう。

 

「これは―――君の冒険だ。結末を決められるのは君だけさ。私も知らん」

 

為すべきことは何か、正しい事が本当に正しい事なのか。ミサミサは言う、全ては自分で決めろと。そう、アリスレインが関わる冒険はシオンと仲間の冒険だ。決してクレアドールの冒険ではない。ならば、自分の意思を貫き通せばいい。正しさなんて知った事か、と行動すればいい。

 

その道を選び、クレアドールの前に立ち塞がる事を選ぶシオン達。その結果がどうなるのか、そしてアリスレインとどんな結末を迎えるのか。それは是非、皆様の目で見届けて欲しい。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

かつて人だった貴方へ 2.次に出会う世界でも (オーバーラップ文庫) | 紙木織々, かやはら |本 | 通販 | Amazon