読書感想:青春マッチングアプリ1

 

 さて、マッチングアプリを題材としたラブコメというのは最近、往々にして存在する訳であるが、そのような作品というのは基本的には大学生だったり、大人だったりの世代が題材となるものである。そして現実世界のマッチングアプリというのは基本的に十八歳以下は利用できない訳であるが。そこにはそれなりの理由が存在する訳である。まぁ抜け道は色々と存在しているのだろうけれど。この作品はそんな、マッチングアプリを題材としてはいるが。アプリはアプリでもちょっと不思議なアプリを題材としているのである。

 

 

「正しい青春の過ごし方って、いったいどうすればいいんだ」

 

とある過去のトラウマにより、恋愛を諦め、周囲から一歩、引いた状態で過ごし。無難にそれなり、に纏まって。そんな自分の青春に悩む少年、夕景(表紙左)。青春てなんだ、とスマホの検索に問いかけてみて見つかったのは、「アオハコ」という謎のリンク。そこを踏んで出された百の質問に答えた翌朝、ダウンロードされていたのは「アオハコ」というアンインストールできぬ謎のアプリ。

 

「―――だから、とりあえず半信半疑だけど、今のところは信じてみようかなって」

 

あらゆる電子マネーや銀行口座を登録すれば現金にも交換できるポイントが400、それ以外はマッチングを待て、という指示だけ。そんなアプリから唐突に来たのは、屋上に行って寝っ転がれという指示。その指示に従った彼の前、屋上にやってきたのは人気者の少女、花(表紙右)。 青春的ラッキースケベ的な支持を何とかクリアし、マッチングによってつながった二人は共に青春的ミッションに挑む事となる。

 

お弁当を作って来たり、自転車に二人乗りしたり。十のミッション、それにより溜まるゲージに何か条件はあるのか。それを二人で探って四苦八苦する中、見えてくるのは花の事情。自分にだけ出されたミッションにも挑みつつ、共に同じ目標に向かおうとする中。一つの失敗が、二人のマッチングを解いて。花の願いは叶わず、二人は離れる事となる。

 

だけど、それではいけないと。それは嫌だと。悩む中、目に留まったのは追加された交換可能な権利のお知らせ。その一つに光明を見出し、級友である朱音を巻き込んで夏祭りに乗り出し。更なるミッション、それをクリアするために、最後にミッションとしてキスをしようとして。だけど、花の僅かな態度に何か、これでいいのかという疑念を見出して。その先、ポイントを使って全部取り攫って行く道を選んで。

 

「―――これからも、私と青春してください」

 

その先にまた二人の青春が重なる矢先、その裏で。夕景に言えぬ思いを抱く幼馴染、三月の元にもアオハコがきて。彼女のミッションが幕を開けるのである。

 

ちょっと不思議なアプリに導かれる、割と真っ直ぐなラブコメなこの作品。一味捻ったラブコメを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。