前巻感想はこちら↓
読書感想:とってもカワイイ私と付き合ってよ! - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻の最後、主人公である大和とヒロインである結朱は偽装カップルという関係性を選んだ訳であるが、一体今巻ではどんな方向へと発展していくのか。その関係に波乱を齎す少女が一人、二人の前に現れるのが今巻である。彼女の名前は日菜乃。かつて大和と友人関係でありながらも、過去の事情より今は疎遠になってしまった少女である。
「そのヘアピン、まだ付けてたのか」
「うん。気に入ってるから」
「・・・・・・そうか」
かつて大和が頑張るのを止めた時、彼女との関係もまた切り捨ててしまった。彼女から離れ、そのまま疎遠となってしまった。
「だからね、もしかしたら、今回のことはチャンスかもしれないって思うんだ」
だが、それで終われる訳もなかった。折しも時期は、ハロウィン文化祭が迫る時期。また皆で一つの事を為すという経験を通じ、日菜乃はかつての大和にまた会いたいと立ち上がっていた。
その様がどうにも眩しくて。彼女の背中に、もしも大和に助けてもらえなかったらというifの自分を垣間見て。
結朱の心には波紋が起こり、それが際限なく広がっていく。それもまた当然の事であるかもしれない。何故なら、自分は大和の昔話を知らないから。もし二人が向き合ってしまったらどうなってしまうか分からないから。そして、もしもの時、自分は大和を引き留められるなんて確証もある関係性ではなかったから。
「・・・・・・あった。けど言わない」
「そうかい」
だからどうしても大和に、不安な心を示すかのように縋りつく。心の揺れが止まらぬ、そのままに。そんな彼女の不安と、それでも背を押す後押しを受け、大和は日菜乃と、自らの過去と向き合っていく。
「さあね。お互い、昔とは違うからな。その上で友達になりたいと思えばなればいいし、そうじゃないなら、離れた距離感でいればいい」
あの日抱いていた思いを話し、遅ればせながらも思いをぶつけ合い。二人はまた友達に戻るでもなく、お互いに並べど道を交える事もなく前を向く。
だが、これで彼等は良かったのかもしれない。確かに全て元通りこそが誰もが望む最良の結末だとしても。一度絆は途切れようと、共に過ごした時間の記憶はそこにある。そしてまた、違う形でもやり直せる。シンデレラの魔法は解けようと、魔法の時間の記憶は残るように。
「―――俺には結朱がいるからだ。だから、俺の居場所はここでいい」
そして、大和はもう新たな絆を見つけているから。前に進むから、もうあの日には戻れない。けれど今、新たな日々を共に過ごしたい彼女はそこにいるから。
一度途切れた絆を清算する少し切なさのある展開と、一度切れて再構成したからこそ何処か甘さが深まった、打てば響くかのような偽装カップル関係が更に深まる今巻。
ラブコメ方面に舵を切り深めたからこそ、この甘さが際立ち切なさというスパイスと共に更に深い味を見せてくれるのである。
前巻を楽しまれた読者様、切なくも甘いラブコメが好きな読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
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