さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は偽装の恋人関係と言うラブコメにおいては使い古されたかの如く、王道な関係についてどう思われるであろうか。偽装の恋人、その関係に本当にラブコメは成立すると思われるであろうか。
そんな偽装の恋人関係となったこの作品の主人公とヒロイン。無害なボッチの陰キャな無類のＲＰＧ好きの少年、大和（表紙左）。クラス１のリア充にして人気者、結朱（表紙右）。
リア充グループの中で突如として勃発した三角関係、そこを何とか解決するために結朱にプレミア付きのゲームを餌に偽装の恋人関係を結ばされる大和。そして、偽装の関係の中で知っていくのは今まで猫を被っていた結朱のナルシストな素顔だったのである。
自分が可愛いと信じて疑わず、誤魔化す必要が無いからこそ大和の前でだけは自然でいられる。だからこそ大和にだけはぐいぐい迫る。
だからこそ打てば響く、二人の会話劇は。打てば必ず帰ってくる、だからこそ安心して相手に会話のボールを投げれるのである。
二人でゲームをしたり、縛りを設けて遊園地を楽しんだり。
そんな中、知っていくのは結朱が只のナルシストではないという事。
自分が大好き、それは確かである。しかし、自分が好きなだけでは成り立たない。
自分が大好きなように誰かを好きである、だからこそ問題なく猫を被れるのである。
何だかんだと楽しい日々の中、自然に隣にいるのが自然になっていく。そして少しずつ、もどかしくも惹かれ合っていく。
だからこそ、なればこそ。
「ま、ラスボスムーヴもたまには悪くないかね？」
彼女自身の嘘が招いてしまった破局の危機を前二、敢えて自分が泥をかぶって悪の仮面を被るとしても、彼女達が幸福な結末を迎える為に悪となれたのである。
これは、まるで擦り切れる程に使いつくされた王道なっシチュエーションでのラブコメである。しかし、だからこそ作者様のバランス感覚と地力の良さが光るラブコメであり、正反対で生き方も違う二人が少しずつ惹かれ合い、何だかんだと居心地の良い唯一の居場所を見出していく、仄かな甘さのあるラブコメである。
だからこそ、その甘さが心地よい。なればこそ、ＳＦな要素のまるでない純粋なラブコメだからこその面白さが楽しめるのである。
最近ラブコメに飢えているという読者様、とにかくラブコメが読みたいという読者様。とりあえず、全てのラブコメ好きな読者様にはお勧めしたい。
きっと、貴方は満足できるはずである。
