前巻感想はこちら↓
読書感想:とってもカワイイ私と付き合ってよ!2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻の最後で元友人であった日菜乃と元鞘に収まらず、偽装カップルという関係を選んだ訳であるこの作品の主人公である大和とヒロインである結朱。しかし、ここまで来ても二人の関係は未だ「偽造カップル」のままであり、未だ本物の感情を伴わぬ関係性である。そんな二人の元にやってくるイベントとは一体、何であろうか。ハロウィン及び文化祭を越えたらラブコメに基本的にやってくるイベントとは何であろうか?
その答えは「クリスマス」。ラブコメというジャンルにとっては酸いも甘いも様々なイベントが待っている特別な日であり、一つの山場として設定される事も多いイベント。偽装カップルである二人にもまた、容赦なくクリスマスというイベントはやってくる。時が巡る以上、その歩みには容赦がない。
「・・・・・・文化祭の時は、頑張ってくれたのに」
大和がデートプランを考える事になり、彼の答えを待つ最中で啓吾の相談に乗る結朱の中、漏れ出るのは小さな不満。恋に向けて頑張ろうとしている啓吾と、時々男気を見せてはくれるけど普段は昼行燈系な「彼氏」である大和を見比べて。小さな悩みはとめどなく。
「この『クリスマスフェルメント』に参加する! これが俺のプランだ!」
が、しかし。結朱の不安はある意味で解決される事になるも、別の期待にも満ちた感情がその心を占める事になってしまう。大和が提案したそのイベントは、片想いの相手を誘って告白すると言うもの。それを彼は、その趣旨も知らず何となく選んでしまったのである。
告白されるかも、と期待と不安に揺れる結朱。
その趣旨を後で知り、慌てて否定しようとする思いの中で自身の心の中、今まさに目覚めていく感情に向き合う事を求められる大和。
そう、求められていくのである。向かい合う事を求められるのである。偽装である自分達の関係と、今の自分の中に芽生えている想いに。その様は、揺れ動くその様は苦くて切ない。だがしかし、それこそが彼等に求められるものであり、あと一歩を踏み出す為に必要な最後の試練なのである。
もどかしくすれ違い、結局当日に別行動をする事になってしまい。だけどこんなにも心が痛い、互いが傍にいない事が何よりも寂しい。
「人を好きになるのって、こんなに怖いことだったんだね」
初めて知った、恋の本質。決して綺麗なだけじゃない、自分では全くコントロールできない己の感情の重さ。
「だから俺は、結朱が好きだ」
しかし、それでも。大和は恐れずに一歩、踏み出してみせた。お互い酷い奴だけど、それでも良いと。そんなお前だからいいと、かっこ悪くも手を伸ばして見せた。
その答えに対し、結朱はどう返すのか。答えはもう、言う必要もないだろう。
正に恋、その光も闇も暴き立てるが如く。全てを描ききるからこそ重厚な面白さのある今巻。
出来得るならば、もう少し二人の恋路を拝みたいものである。