読書感想:他人を寄せつけない無愛想な女子に説教したら、めちゃくちゃ懐かれた

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さて、説教するのは相手の事をそれだけ心配しているからこそ、愛故にかもしれないが説教くさくなってしまうのは他人に取って迷惑かもしれないので、説教はなるべく避けたいものであるかもしれない。だがしかし、どうしても許せぬことがあるとしたら、柄にもなく怒ってしまうのは仕方のない事であるのかもしれない。

 

クラス委員長で成績優秀、更には家事も完ぺきにこなす、言わば完璧人間な主人公、直哉。彼はある日、進路相談の場で担任から唐突に依頼を受ける。

 

 その依頼とは、遅刻の常習犯であり他人を寄せ付けぬ雰囲気を纏う不良系問題児、梨沙(表紙)を何とかしてほしいというクラス委員だからこそ頼まれそうな依頼である。

 

頼まれたのなら何とかしないといけない。そう思い話しかけるも取りつく島もなく、邪険に扱われ。

 

「―――ふざけるなよ」

 

「必ず、後悔するぞ―――」

 

だが、直哉にとって梨沙の生き方は許せぬものであった。その理由は何か。それは何処か自身の過去に重なってしまったから。だからなのだろう、直哉が柄にもなく静かに激怒し説教してしまったのは。

 

自分のキャラにそぐわぬその態度に後悔を抱える直哉。が、しかし。この日からいきなり、何かが確かに変わり出す。

 

「料理できるのとできないの、どっちのほうがいいと思う?」

 

珍しく彼女が遅刻しなかったかと思えば、急にいきなり裏が読めぬ質問を繰り出してきて。

 

戸惑う直哉をよそに、いきなり一緒に帰ろうと誘って来たり、更には一緒に昼食を取ろうとぐいぐいと乗り込んで来たり。

 

いきなり始まる非日常、その中で向き合う二人。二人は少しずつ、お互いが抱える秘密に触れ、知っていく事となる。

 

梨沙が知った直哉の過去。かつて暴れ回って悪名を欲しいままにしていた過去。

 

直哉が知った梨沙の秘密。彼女の家族に関わる痛ましい秘密。

 

「あんたのことが知りたい」

 

今、過ちの道を辿る者。今、過ちを抜けて歩き出している者。同じ道を離れ歩く二人は出会い、彼女は彼を知りたいと願う。彼みたいになりたいから、彼の生き方に答を見出したいから。

 

この作品は、ラブコメ、とは言い難いのかもしれない。では何と言えばいいのか。これは「青春」の物語である。痛くて苦くて、えぐくて。けれどその淡々としたどこか荒涼とした景色の中に、確かな変化の光が差し込むことにより、変化が際立ち面白さへと繋がっているのである。

 

青春の物語が読みたい読者様、揺れ動く等身大の感情が見てみたい読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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読書雑記:発売日前恒例、新刊紹介なお話。GA文庫編。

こんばんは。春眠暁を覚えずと言いますが、新社会人の皆様も、既に社会人の皆様も、学生の皆様も寝坊には気をつけてくださいね。真白優樹です。さて、本日のダイナミックな寝坊の話は脇に置き、本日は来週発売予定のGA文庫新刊の中からこのブログでピックアップ予定の作品について話したいと思います。

 

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・蒼と壊羽の楽園少女


・著:天城ケイ先生 絵:白井鋭利先生

 

ではまずはこちらの新作です。こちらはファンタジア文庫で刊行されているアサシンズプライドシリーズでご存じの方も多いのではないでしょうか。天城ケイ先生の新作となります。広大な世界観を予感させてくれる、GA文庫が力入れて送り出そうとしているこちらの作品。楽しみですね。

 

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・魔神に選ばれし村人ちゃん、都会の勇者を超越する

 

・著:年中麦茶太郎先生 絵:shnva先生

 

二作品目はこちら。マホテキこと剣士を目指して入学したのに魔法適性9999なんですけど!?シリーズでご存じの方も多いでしょう。年中麦茶太郎先生の新作です。先生の原点に立ち返ったかのような世界観と登場人物、これは期待しかありませんね。

 

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・俺とコイツの推しはサイコーにカワイイ2

 

・著:りんごかげき先生 絵:DSマイル先生

 

ではここからは続刊系の作品の紹介です。今巻では夏祭り、そしてライバルとの対決が待っているとの事で、推しへの愛は何処へ向かうのか。楽しみになりますね。

 

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・神殺しの魔王、最弱種族に転生し史上最強になる 2

 

・著:えぞぎんぎつね先生 絵:TEDDY先生

 

続きましての作品はこちら。今巻は前巻で姿を見せた魔王、その背後の神との対決という事で、ド派手な戦いが予想されますがどうなることか。激しい戦いに期待したいですね。

 

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・厳しい女上司が高校生に戻ったら俺にデレデレする理由 2

 

・著:徳山銀次郎先生 絵:よむ先生

 

五作品目はこちら。先月から一月刊行延期の後に発売される今巻では、恋敵らしきヒロインが登場するとの事。どんな修羅場と甘々が待っているのか。楽しみです。

 

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・その商人の弟子、剣につき2

 

・著:蒼機純先生 絵:美和野らぐ先生

 

六作品目はこちら。今度はどんな商売をどんな相手に行うのか。独特のファンタジーの面白さがどう高まるか。期待したいですね。

 

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・尽くしたがりなうちの嫁についてデレてもいいか? 2

 

・著:斧名田マニマニ先生 絵:あやみ先生

 

七作品目はこちら。契約結婚から始まった二人の関係に恋人と言う新たな色が加わる今巻。どんな甘さを加えてどう料理してくるのか。楽しみです。

 

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・忘れえぬ魔女の物語2

 

・著:宇佐楢春先生 絵:かも仮面先生

 

八作品目はこちら。一巻でも上手にまとめられていたかの物語は、ここからどう発展するのか。どう広げてくるかに注目したいと思います。

 

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・やたらと察しのいい俺は、毒舌クーデレ美少女の小さなデレも見逃さずにぐいぐいいく3

 

・著:ふか田さめたろう先生 絵:ふーみ先生

 

では最後、九作品目はこちら。付き合うという言葉の意味、恋人と言う関係の意味が既にゲシュタルト崩壊していますが、前巻の衝撃的な引きからどうなるのか。楽しみです。

 

以上、期待の九作品でした。ではまた、発売日が来ましたら読んでいきましょう。

 

 

読書感想:幼なじみからの恋愛相談。 相手は俺っぽいけど違うらしい

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 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は「鈍感系主人公」、又は「難聴系主人公」という言葉を聞いたことはあられるであろうか。聞いた事が無いと言う読者様の為に捕捉するなれば、上記の言葉はかつてのラブコメ系作品における、主人公のテンプレである。

 

多くのヒロインから思いを寄せられても、勘違いしたり、それはないと思って思いに気付かない。思いを伝えるような言葉を伝えられても、その時不思議なことが起こったと言わんばかりの勢いで、聞き逃す。何を言っているのだろうと思われる読者様、これが昔のラブコメ系作品のテンプレである。今時のラブコメ系作品においては中々見ないであろうタイプの主人公像が、過去の時代においては受けていたのである。

 

 そんな、ある意味思春期そのものの主人公像。それが存分に出ているのが、この作品の主人公である隆之介である。

 

「好きな人ができた」

 

元野球部のエースでありながら、怪我を理由に引退し。何処か気の抜けた日々を過ごす高二の春。彼は突然、とある少女から恋愛相談のお願いをされる。

 

彼女の名は栞(表紙)。中学時代から徐々に疎遠となってしまった幼馴染であり、クールビューティーと名高い女子バスケ部のエースである。

 

同じ学校、身近にいる、格好いい、けれど連絡先は知らない。そう言う彼女へ、まずは連絡先を聞いてみたらとアドバイスする隆之介。

 

 すると何故か、彼女は自分へと連絡先を交換しようとお願いしてきて。そこから、何故かアドバイスした事が自分へと還ってくる、謎の生活が幕を開けるのである。

 

なぜか彼女が自分にお弁当を作って来たり。久しぶりに家に招かれたかと思えば、二人でデートする事になったり。

 

そんな日々の中、隆之介はまさか自分の事が好きなのかと思いながらもいや違うだろと揺れ惑い、その中で栞と再び向き合っていく事となる。

 

「・・・・・・幼馴染は、特別な関係だもん」

 

彼女のふとした呟きに心が揺れたり。

 

「隆之介が私を見る目が変わっただけで、私は、何も変わってないよ」

 

不意に訪れた二人きりのお泊りの機会。背中越しに告げられた彼女の言葉をいぶかしんだり。

 

本当に自分なのか、それとも違うのか。そんな戸惑いの中、栞を襲う危機の解決へと立ち向かう事になったその時。彼女の為に、もう一度野球と向き合った時。高く打ち上げた白球に導かれるかのように、隆之介の心に確かな変化の機会が訪れる。

 

好きな人が誰だっていい、でも自分だったらいい。多分自分は、彼女の事が好きだから。

 

不器用に過ぎる二人が、もどかしくもすれ違い。もどかしくもこそばゆく、けれど確かに、おっかなびっくりだけれど一歩踏み出す。

 

中々進めず遠回り、けれどそれは自然な等身大の感情。だからこそ甘く淡く。透明感と瑞々しさのある甘さと面白さが醸し出されているのである。

 

淡い色のラブコメが好きな読者様、可愛いヒロインに悶えたい読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

幼なじみからの恋愛相談。 相手は俺っぽいけど違うらしい (角川スニーカー文庫) | ケンノジ, やとみ |本 | 通販 | Amazon

 

読書感想:剣帝学院の魔眼賢者2

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前巻感想はこちら↓

読書感想:剣帝学院の魔眼賢者 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で戦いの始まりを描いたこの作品であるが、今巻は前後編と後編と言わんばかりにとんとん拍子で戦いが進む巻であり、魔王との戦いに一つの決着がつくと言う、衝撃の展開の速さである。何故そんなに早いのか、もうお分かりであろうそういう事である。なので画面の前の読者の皆様の中におられるであろうファンタジー好きの読者の皆様は、是非この作品を応援してほしい次第である。

 

 前巻で魔王の一体を討伐し、英雄として表彰される事となった我等が主人公、ラグ。彼を隊長として分隊が作られる事となる中、都へと招かれるラグ。

 

史上三人目の英雄として表彰されたラグを前に、魔神の気配が色濃く残る聖霊剣を携えた当代の剣帝は宣言する。残る全ての魔王を討伐する作戦を実施するという事を。

 

向かうは残る魔王達が跳梁跋扈し、無数の魔物達が襲い来る北の大陸。全ての始まりとなった地であり、全ての決着の舞台となる地。

 

ラグを巡り女同士の戦いの気配が巻き起こり、クラウやリサ、オリヴィア達が彼の側にいたいと火花を散らす中、ラグは二人目の英雄であり、自身の師匠によく似た少女、リンネ(表紙)と関わり合う事になる。

 

「―――君と話していると、知らない感情が湧いてくる。ひょっとして君は・・・・・・」

 

まるで自分との思い出を覚えているように、意味深な言動を取りながらもどこか天然でズレた一面を晒す彼女に、戸惑いと親しみを覚えると共に師匠の面影を見出し切なくなったり。

 

かと思えば、城である魔王との戦いの後、魔王の力の残滓を吸い取る彼女を見て不安に駆られたり。

 

司令塔であった魔王を滅ぼしたからなのか、統制の取れた行動をとらず各個に襲い来る魔王達。その戦いの果て、ラグは知る事になる。リンネの正体と生まれた意味。その裏で糸を引いていた剣帝の聖霊剣に封印された魔神の思惑を。

 

己の欲のままに人を利用し、新たな神となる事を狙う魔神。かの者の思惑に利用され、もはや引き返せぬ所まで来てしまったリンネは自らを殺す事をラグに願う。

 

「でも、その願いは聞けない。師匠の頼みならどんなことでも叶えるけれど、あなたは師匠じゃないから」

 

だが、それを叶える事は果たして正しい事か。只一人を救えずして万能なのか、賢者と言えるのか。

 

「だから僕は、僕のやりたいようにする。あなたを死なせたくないから、僕はあなたを助ける」

 

否。彼は賢者である。限界もなくどこまでも進んでいけて、己の願いをどんな時でも押し通せる力があるからこそ賢者なのだ。

 

それぞれの思いが巡る中、戦いに続く戦いが熱さという面白さを見せてくれる今巻。

 

謎が綺麗に収束する気持ち良さを味わいたい読者様、ファンタジーが好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

 

 

読書雑記:この間のとある作品の打ち切り危機の一報を受け、かの作品の応援兼、応援する事は大切ですよねというお話

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こんばんは、真白優樹です。さてさて、突然ですが画面の前の読者の皆様はこちらの作品をご存じでしょうか。

 

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読書感想:氷の令嬢の溶かし方2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 ご存じではないと言う方はどうか今すぐ知っていただきたい。そして出来れば、紙の書籍の方で買っていただきたい限りです。ではその理由は何故なのでしょうか。その理由は只一つ、詳しくは作者様のtwitterを見ていただきたいのですが、この作品は今、打ち切りの危機に瀕しているのです。

 

 昨今のラブコメの流行と言えば幼馴染、そう言っても過言ではないかもしれません。実際、各レーベルの新刊一覧を見てみても、どこのレーベルにもどこかにラブコメがあり、その中には間違いなくヒロインが幼馴染のラブコメがある事でしょう。対し、この作品はクラスメートがヒロインです。しかも、ヒロインである冬華は孤高のタイプであり、この作品の主軸は、そんな冬華の心の壁を溶かし、乗り越えていくという事です。

 

ですがこうは思えないでしょうか。確かに幼馴染とはすでに距離が近い事が常であり、既に両片思いの状態であるという事が多いです。しかし、心の距離が遠いからこそ、ヒロインの心の変化と心の壁が解けていくにつれて、自分だけが知る表情が増えていく事の何と愛おしいことか。既に距離が近く、心の壁が無いからこそ醸し出せる甘さがあるのも確かです。ですが、一歩一歩乗り越えていくからこその甘さだってあるのではないでしょうか。

 

 そういう甘さは、ラブコメにおいては手あかがつく程に使い倒されたものであり、現代のラブコメの風潮においては傍流であると言えるかもしれません。ですが、今、このラブコメ界だからこそそんな甘さもあって良いとは思われませんか? 幼馴染系作品の甘さは私も好きです。ですが、同じ甘さばかりではつまらない。だからこそ偶には違った甘さもあっても良いのではないでしょうか?

 

 どうか画面の前の読者の皆様もこちらの作品を読んでいただき、応援してほしいと切に願います。自慢ではありませんが、5000冊以上のラノベを今まで読んできた私が面白さを保証いたします、太鼓判を押させていただきます。

 

 この願いが、貴方の心に届く事を切に願います。ではここからは話を変え、応援することの大切さについて自分なりの考えをお話いたします。

 

 昨今のラノベ界においてどんな作品が多いか、画面の前の読者の皆様はご存じですか? 皆様もご存じでしょう。カクヨム小説家になろうという小説投稿サイトを。そう、今、毎月の新刊ラインナップを見てみても、様々なレーベルで小説投稿サイト原作の作品が毎月何作も出ているのです。

 

無論、オリジナルの作品もあります。小説投稿サイトから作品を出した作家様がオリジナルの作品を出している例もあります。

 

 ですが、どんな作品にも共通して言える事は一つ、それは人気が出なければ打ち切られる危険性があるという事。そして打ち切りのラインは今、下がってきている傾向にあると言っても良いでしょう。

 

無論、商売です。故にそこには利益の話が絡まります。売れなければ打ち切られる、それもまた常なのかもしれません。

 

 ですが、私は全ての出版された作品はその終わりまで進められる権利があると思っています。その権利を、利益という目的で奪っても良いのでしょうか。

 

私の考えを綺麗ごとと切り捨てる読者様もおられるでしょう。どうぞ切り捨ててください。私もこれはきれいごとだと思いますし、商売である以上仕方のない事であると言う考えはあります。

 

 ですが、画面の前の読者の皆様の中にも好きだった作品が打ち切られて哀しい思いをした、残念に感じたと言う読者様もおられるでしょう。なればこそ、応援の声を上げるのは大切な事です。未熟な文、未熟な声しか出せないとしても大切なのは好きと言う気持ちの叫びをあげる事。だからこそ、応援したいと思った作品に応援の声をあげることは大切な事なのです。

 

確かにweb原作の作品であれば、スマホ一台あれば読めます。書籍化されている範囲を読めますし、その先を読む事も出来ます。ですが、もし原作から大幅な改稿を受けているとしたら? 打ち切りになって原作すらも削除されてしまったら?

 

そんな場合もありえるかもしれません。そして、まず最初に書籍を購入することでも応援となります。

 

「応援のしたい時分に作品なし」。そんな状況に陥ってしまってからでは全てが遅いのです。だからこそ、どうか画面の前の読者の皆様も応援したい作品は、自分の時間の許す限り早くに応援致しましょう。出来れば、誰か他のまだ見ぬ読者の方々に届くように応援の声を上げましょう。

 

一人でも多く、自分の好きな作品への想いを叫べる読者様が増える事を。

 

私は願い、この記事の筆を置かせていただきます。

読書感想:世界最速のレベルアップ

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 さて、ファンタジー、もしくはRPGにおいてレベルアップという要素が絡む場合、必要な事は何であろうか。例えば非戦闘系のスキルであった場合、そのスキルを使い込む事が必要であるかもしれない。戦闘系のスキルであれば、戦闘経験の蓄積が必要であるかもしれない。

 

では上記の要素二つに共通してあるものとは何であろうか。それは「時間」。どのみち経験というものは重要であり、そこには多大な時間がかかってしまうのである。

 

 この「時間」という要素。これこそが、この作品で重要となってくる要素なのである。

 

世界中にダンジョンが出現し幾年月。冒険者という職業が成立し、社会へと受け入れられたとある日本。

 

 かの世界で、妹と二人で生きていくために高校卒業後に冒険者となった青年、凛(表紙中央)。彼には基本的スキルの他にもう一つ身に着けていたスキルがあった。その名は「ダンジョン内転移」。ユニークスキルでありながら使いどころがない、ゴミと呼んでも差し支えないスキルである。

 

が、しかし。実はこのスキルはゴミではなかった。ではなぜ勘違いされたのか。それはこの世界で常識と信じられていた事を凜も信じていたからである。

 

 それは、この世界のダンジョンは攻略すると一定数レベルが上がるが、一度攻略すると次に挑戦する為に一週間の再挑戦期間が必要となる常識。再挑戦期間はダンジョンに入れない、故に何度もダンジョンを攻略するのは容易ではない。だがしかし、凛だけは違った。彼の「ダンジョン内転移」はその常識に縛られず、ダンジョンの中に入る為のスキルであったのだ。

 

何度も、それこそ一日に何度も同じダンジョンへ挑む事が出来る。攻略する事が出来る。もうお分かりであろう、その事がどれだけ多大な恩恵となるか。

 

そんな常識外の力を凛は如何様に使うのか。悪用するのか。否、彼は純粋に力を求め、強くなるために力を使い、何度もダンジョンへと挑んでいく。ただ強くなる、そのために。

 

そんな彼に訪れるのは多くの出会い。ひょんな事から助ける事になった新人ヒーラー、由衣(表紙右)に懐かれ、自分を追放したパーティの新入り、零(表紙左)には不思議と興味を持たれ。

 

彼女達と何気ない日々を重ねながらも、凛はダンジョンの中で出会っていく。名もなき騎士やオークジェネラルを始めとする、最速で強くなっていく凛よりもはるかに強い数々の強敵達と。

 

「悪い、遅くなった」

 

戦いの中、凛は知らぬ間に近づいていく。かつて自分が憧れた背中、ヒーローとしての理想に。

 

「俺は世界最速で―――最強の座に辿り着いてみせる」

 

その胸に宿るは、まるで求道者が如き純粋なる力への探究、そして憧れへと辿り着くと言う決意。

 

正に格好いい、今まさにヒーローへとなっていく。どこまでいっても純粋に進み続ける、だからこそ格好いいのだ彼は。そして、強敵との激突がナイスなタイミングで巻き起こるからこそ、適度に緊張感が沸き上がり、物語の中、彼等の戦いの舞台へと心が引き込まれるのだ。

 

最近甘い作品ばかりで食傷気味の読者様、心燃やしたいそこの読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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読書感想:この世界、わたしに都合がいいようです!

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 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。一つ思い返してみてほしいのであるが、異世界転生と呼ばれるジャンルにおいて、転生先はどんな境遇の作品を多く読まれてきたであろうか。転生先が身分が低く、逆境から這い上がる作品も多ければ、転生先が身分が高く。生まれた時から既に勝ち組。そんな作品も多いだろう。貴方はどちらの方の作品を読まれてきたであろうか。

 

この作品の主人公においては、後者である。だがしかし、生まれた時から全てを手に入れている、という訳でもなく唯一、絶対に許せぬポイントがあった。そのポイントを巡り展開していくのがこの作品である。

 

 とある異世界の、まだまだ歴史の浅いとある大帝国。その帝国の皇女であるアウローラ(表紙中央)。可憐な容姿に優れた魔力、臣下は美少女揃いで次期皇帝も確実。既に生まれた時から勝ち組、と言っても過言ではない彼女には一つ、悩みがあった。

 

 それは男性器、平たく言えば(自主規制)がついていない事。女尊男卑が強いこの社会において、何故そんな事を思うのか。それは彼女がかつて日本で暮らした高校生だったと言う前世を持ち、初デートを前にしてあっけなく事故で死んだと言う過去を持つからである。

 

 そんな彼、もとい彼女は「男」に戻りたい。なればどうするか。彼女は周りの人間を巻き込み、男に戻る術を探して爆走を開始するのである。

 

「わたしってなんだ、わたしって! 俺は俺だ! わたしじゃねぇ!」

 

時に臣民からのラブコールに応えた後で自分の言動を想いっきり後悔し。

 

「俺に足りないものはなんだと思う?」

 

「思慮と分別でしょうね」

 

「そうだけども! そうだけども!」

 

時に、秘書官であるメモリア(表紙右上)にやり込められて悶えたり。

 

 時には歴史に埋もれた遺跡を掘り起こしたり、学び舎を訪ねたりしたかと思えば、反乱分子が呼び出した大悪魔にまで性転換を願ってみたり。

 

「それが悪魔の言うことかッッッッッッ!!」

 

が、夢は儚く風に消え、夢破れて激怒し悶え転がる。

 

 この作品は、「男」として欠落を抱えた元少年と何処か人間としてクレイジーな奴等が織りなすコメディである。ラブが現状一切存在しない、ドタバタに容量を全振りしたと言っても過言ではないコメディである。だがしかし、だからこそ面白い。余計なものを一切省いているからこそ、むき出しの笑いの魔法が襲い掛かってくるのである。

 

何も考えず笑いたい読者様、ドタバタなコメディが好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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