読書感想:剣帝学院の魔眼賢者2

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前巻感想はこちら↓

読書感想:剣帝学院の魔眼賢者 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で戦いの始まりを描いたこの作品であるが、今巻は前後編と後編と言わんばかりにとんとん拍子で戦いが進む巻であり、魔王との戦いに一つの決着がつくと言う、衝撃の展開の速さである。何故そんなに早いのか、もうお分かりであろうそういう事である。なので画面の前の読者の皆様の中におられるであろうファンタジー好きの読者の皆様は、是非この作品を応援してほしい次第である。

 

 前巻で魔王の一体を討伐し、英雄として表彰される事となった我等が主人公、ラグ。彼を隊長として分隊が作られる事となる中、都へと招かれるラグ。

 

史上三人目の英雄として表彰されたラグを前に、魔神の気配が色濃く残る聖霊剣を携えた当代の剣帝は宣言する。残る全ての魔王を討伐する作戦を実施するという事を。

 

向かうは残る魔王達が跳梁跋扈し、無数の魔物達が襲い来る北の大陸。全ての始まりとなった地であり、全ての決着の舞台となる地。

 

ラグを巡り女同士の戦いの気配が巻き起こり、クラウやリサ、オリヴィア達が彼の側にいたいと火花を散らす中、ラグは二人目の英雄であり、自身の師匠によく似た少女、リンネ(表紙)と関わり合う事になる。

 

「―――君と話していると、知らない感情が湧いてくる。ひょっとして君は・・・・・・」

 

まるで自分との思い出を覚えているように、意味深な言動を取りながらもどこか天然でズレた一面を晒す彼女に、戸惑いと親しみを覚えると共に師匠の面影を見出し切なくなったり。

 

かと思えば、城である魔王との戦いの後、魔王の力の残滓を吸い取る彼女を見て不安に駆られたり。

 

司令塔であった魔王を滅ぼしたからなのか、統制の取れた行動をとらず各個に襲い来る魔王達。その戦いの果て、ラグは知る事になる。リンネの正体と生まれた意味。その裏で糸を引いていた剣帝の聖霊剣に封印された魔神の思惑を。

 

己の欲のままに人を利用し、新たな神となる事を狙う魔神。かの者の思惑に利用され、もはや引き返せぬ所まで来てしまったリンネは自らを殺す事をラグに願う。

 

「でも、その願いは聞けない。師匠の頼みならどんなことでも叶えるけれど、あなたは師匠じゃないから」

 

だが、それを叶える事は果たして正しい事か。只一人を救えずして万能なのか、賢者と言えるのか。

 

「だから僕は、僕のやりたいようにする。あなたを死なせたくないから、僕はあなたを助ける」

 

否。彼は賢者である。限界もなくどこまでも進んでいけて、己の願いをどんな時でも押し通せる力があるからこそ賢者なのだ。

 

それぞれの思いが巡る中、戦いに続く戦いが熱さという面白さを見せてくれる今巻。

 

謎が綺麗に収束する気持ち良さを味わいたい読者様、ファンタジーが好きな読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。