前巻感想はこちら↓
読書感想:氷の令嬢の溶かし方(1) - 読樹庵 (hatenablog.com)
この作品をここで、こんな所で終わらせて良いのだろうか。否、そんな事は無い筈だ。どんな作品も生まれ出たのならば、最後まで駆け抜ける権利を有する筈であり、こんな所でその権利を奪われる事はあってはならない筈である。
何故こんな前書きとなってしまったのか。それは今巻の後書きで語られているが、この作品の三巻が出るかは怪しいらしいからである。無論私はここで終わってほしくはない。故にこそ、私は私のできる事を。この巻の感想を粛々と綴っていく次第である。
では今巻では一体、何が待っているのか。今巻で綴られる季節は年越しからバレンタインにかけて。リアルにおいても徐々に冬が終わり始め、春の訪れが迫り出してくる頃である。
「氷室さんのあんな顔、俺は初めて見たよ」
新年の初詣、朝陽の母親から借りた振袖で初詣に出かけたり。 朝陽と、彼の友人であるバカップル、千昭と日菜美にサプライズで誕生日を祝われたり。
初めての経験を朝陽と共に。そして千昭と日菜美へ、少しずつ関係を広げていくように。一歩ずつだけれど、確かに少しずつ冬華は変わっていき、その心の氷は解けていき。朝陽以外へも、その素顔を見せる機会が増えていく。
だがしかし、解ける心が引き寄せるのは良い人間だけではなく悪い輩も引き寄せてしまい。更には、冬華の心の傷と現在進行形で抱える、心を凍らせた全ての原因。彼女の家族問題が朝陽へと示される。
「友達じゃダメなんでしょうか?」
朝陽の心を疑い、何故に不安な顔をしたのか。何故、何処か縋りつくような顔を彼に見せたのか。
それは、彼によって変えられてしまったから。只一人、何処までも傷ついて、だけど一人で生き抜こうとして。
「私はあなたの熱に触れてしまった。差し伸べられた手に惹かれてしまった」
だが、気が付けば彼女は彼の手を取ってしまっていた。
「そのお節介に私は救われたんです。誰かと関わることの大切さを朝陽くんは教えてくれた。私にもう一度、人と関わる勇気を与えてくれた」
ぶっきらぼうだけど、それでも側にいてくれた。彼がいたから思い出せた想いがあった。
「もう二度と、誰かと離れ離れになるのは嫌なんです・・・・・・」
だが、だからこそ。誰かの温もりを知ったからこそ。彼女はもう離したくないと叫んだのだ。あの寒い、凍り付いた日々はもう嫌だと。
「俺だけは約束する。絶対に離れないって」
全てを受け止め、朝陽は改めて手を伸ばす。もう二度と、一人になんてしないと示すかのように。
「改めて私、朝陽くんに出会えて本当に良かったです」
彼の言葉は彼女へ消えぬ熱を届け。そして彼女の言葉は彼の世界を鮮やかに染め、彼の心の奥底の想いに名を届ける。その名は「恋」。確かな熱を持つ、甘くて温かい感情なのだと。
他人から友達、そして両片思い。何でもない日々を積み重ね、変わっていく。特別になっていく。惹かれ合っていく。
だからこそ、王道に甘い、王道に面白い。私はそう叫びたい。
前巻を楽しまれた読者様、やはりラブコメが好きな読者様。どうかこの作品を応援してほしい。二人の物語の続きを読みたいという声を上げてほしい。
一つでも多くの声が集まる事を願う。
そして、きっと貴方も。このラブコメを読んだのならば、心のどこか大切な所に熱が灯される筈である。
氷の令嬢の溶かし方(2) (モンスター文庫) | 高峰 翔, 加川 壱互 |本 | 通販 | Amazon