読書感想:幼なじみからの恋愛相談。 相手は俺っぽいけど違うらしい

f:id:yuukimasiro:20210327174407j:plain

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は「鈍感系主人公」、又は「難聴系主人公」という言葉を聞いたことはあられるであろうか。聞いた事が無いと言う読者様の為に捕捉するなれば、上記の言葉はかつてのラブコメ系作品における、主人公のテンプレである。

 

多くのヒロインから思いを寄せられても、勘違いしたり、それはないと思って思いに気付かない。思いを伝えるような言葉を伝えられても、その時不思議なことが起こったと言わんばかりの勢いで、聞き逃す。何を言っているのだろうと思われる読者様、これが昔のラブコメ系作品のテンプレである。今時のラブコメ系作品においては中々見ないであろうタイプの主人公像が、過去の時代においては受けていたのである。

 

 そんな、ある意味思春期そのものの主人公像。それが存分に出ているのが、この作品の主人公である隆之介である。

 

「好きな人ができた」

 

元野球部のエースでありながら、怪我を理由に引退し。何処か気の抜けた日々を過ごす高二の春。彼は突然、とある少女から恋愛相談のお願いをされる。

 

彼女の名は栞(表紙)。中学時代から徐々に疎遠となってしまった幼馴染であり、クールビューティーと名高い女子バスケ部のエースである。

 

同じ学校、身近にいる、格好いい、けれど連絡先は知らない。そう言う彼女へ、まずは連絡先を聞いてみたらとアドバイスする隆之介。

 

 すると何故か、彼女は自分へと連絡先を交換しようとお願いしてきて。そこから、何故かアドバイスした事が自分へと還ってくる、謎の生活が幕を開けるのである。

 

なぜか彼女が自分にお弁当を作って来たり。久しぶりに家に招かれたかと思えば、二人でデートする事になったり。

 

そんな日々の中、隆之介はまさか自分の事が好きなのかと思いながらもいや違うだろと揺れ惑い、その中で栞と再び向き合っていく事となる。

 

「・・・・・・幼馴染は、特別な関係だもん」

 

彼女のふとした呟きに心が揺れたり。

 

「隆之介が私を見る目が変わっただけで、私は、何も変わってないよ」

 

不意に訪れた二人きりのお泊りの機会。背中越しに告げられた彼女の言葉をいぶかしんだり。

 

本当に自分なのか、それとも違うのか。そんな戸惑いの中、栞を襲う危機の解決へと立ち向かう事になったその時。彼女の為に、もう一度野球と向き合った時。高く打ち上げた白球に導かれるかのように、隆之介の心に確かな変化の機会が訪れる。

 

好きな人が誰だっていい、でも自分だったらいい。多分自分は、彼女の事が好きだから。

 

不器用に過ぎる二人が、もどかしくもすれ違い。もどかしくもこそばゆく、けれど確かに、おっかなびっくりだけれど一歩踏み出す。

 

中々進めず遠回り、けれどそれは自然な等身大の感情。だからこそ甘く淡く。透明感と瑞々しさのある甘さと面白さが醸し出されているのである。

 

淡い色のラブコメが好きな読者様、可愛いヒロインに悶えたい読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

幼なじみからの恋愛相談。 相手は俺っぽいけど違うらしい (角川スニーカー文庫) | ケンノジ, やとみ |本 | 通販 | Amazon