突然ではあるが画面の前の読者の皆様、貴方は家族のありがたみを知った時ってあるだろうか。孝行のしたい時分に親は無し、世にはこんな諺があるように、気付けば親とはいなくなっているものなのかもしれない。
そして、親が無い者達にとってこの世界は生きづらいものかもしれない。ではこの作品の中で描かれるあの子達はどうなのだろうか。
主人公である真は唯一の肉親であった祖父を亡くし、天涯孤独となってしまった少年である。そんな彼が料理のできる住み込みのバイトとして雇われ引き取られたのが、遠縁の親戚であった草原四姉妹であった。
小説家である何処か不思議な天才、長女の宙子(表紙右から二番目)。
クールで常識人な次女、波月(表紙右端)。
元気いっぱい、猪突猛進な四女、美星(表紙左端)。
そして、かつて真が振ってしまった後輩、三女の姫芽(表紙左から二番目)。
では彼女達と真の共通点とは何か。それは家族がいない、親がいないという事である。
親がいない、親の愛を知らない。だからこそ何かを求めて惹かれ合うように出会い、そしてお互いがお互いを埋め合うように家族になっていく。
宙子から説教されながらも信頼を得て。
自分が凡人である事に思い悩む波月の心を知らぬ間に救い、真っ直ぐに受け止められ。
共に遊ぶうちに心の琴線に触れ、美星の信頼を勝ち取り懐かれて。
共に過ごすうちに真の心の中に注ぎ込まれていったのは家族の愛情。ちょっとどこにもないけれど、ここにしかない絆の形。でも、それだけでは足りなかった。まだ人とはなれなかった。ではそんな彼を人にしてくれたのは誰か。
それこそが姫芽の役目。どんな曇天も撃ち抜いて真っ直ぐに届けるのが彼女にしか出来ない事。
誤解からすれ違い、とっさの嘘でまた拗れて。辿り着いた思い出の場所、そこで問いかけるのは恋心を砕いた真意。
そこで晒されるは真の想像を絶する半生、まるで泥人形のように生きてきた真似事の人生。
だけど。
そうではないと。
「・・・・・・あたしのヒーローを、―――・・・・・・あたしだけの王子様を―――! そんなちいさな、勝手な思い込みで・・・・・・! 馬鹿にするなぁ―――――――――――――――っ!!」
貴方は人形なんかじゃない、こんな人形は何処にもいない。貴方はただ唯一の王子様。だからこそ侮辱する事は貴方自身にも許さない、そう姫芽は叫んだのだ。
この瞬間、本当の意味で真は人となれたのだろう。まるで神に作られた泥人形が愛を知り人となるかのように。
この作品は終わらぬ恋を抱えたヒロインが主人公の手を引いて立たせ、同じ舞台に引きずり出す作品である。そして、歪で何処か欠けた子供達が出会い、ここにしかない家族の形を作り出していく作品なのである。
だからこそ私は声を大にして言いたい。何も聞かず読んでほしい、この作品は万人に読まれるべき作品であると。
全ての読者様、どうかこの作品の頁を開いてほしい。そして撃ち抜かれてほしい。面白さは私が保証するので。
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