読書感想:元聖騎士団、今は中級冒険者。 迷宮で捨てられた奴隷にご飯を食べさせたら懐かれました

 

 さて、現実世界において三十代後半、と言えば年齢的に言えばアラフォー、と呼ばれる世代であり働き盛り、脂がまだまだ乗りまくっている頃か、それとも少しずつ枯れ始めて老成へと段階を移していく頃だろうか。とまぁそんな話題はともかく。ここ最近、ラノベの主人公としておっさん等の年配な主人公がちらほら見えるのは何故だろうか。ラノベを読んでいる人間がそういう世代になり始めた事を考慮して、そういう事になっているのだろうか。

 

 

とまぁそんな話題はさておき。この作品の主人公、ファレル(表紙右)も所謂「おっさん」と呼ばれる世代である。生年を自分でも知らぬので三十代後半くらい、多分。三十代後半と言えば何かしら役職についていてもおかしくはない。だが彼はごく普通の中級冒険者、として振る舞っているのだ。

 

「この世の果て」と呼ばれる都市、エルバトス。広大にして深淵、無数の魔物が生息し誰の踏破も許していない、「ヴェルデ大迷宮」が近隣にある都市。

 

「今くらいが俺にはちょうどいいんだ」

 

そんな都市で、元聖騎士団の副団長という肩書を持つ彼は、一身上の都合で退職し中級冒険者として。日々細々とした仕事で頑張りながら、街の人たちに頼られる冒険者として生活していた。

 

そこへ馴染みの受付嬢、イレーヌから持ち込まれたのは外から来ている特級の冒険者パーティー、「黎明の宝剣」が大迷宮に戦闘奴隷を置いて帰ってきたらしいという話。生存限界が迫るその奴隷を救うため、他の依頼がてら大迷宮に突入し。かつての竜の巣で戦い続けていた奴隷、セティ(表紙三人並び中央)を保護し街へと連れ帰る。

 

「おいしい・・・・・・」

 

さて、彼が保護したのはどんな存在か。そもそも喋らぬセティに試行錯誤で交流しようとする中、馴染みの薬師、メネアが持ってきた本にあったのは、どうもセティは大陸北部の竜を祖先とする竜人らしいとの事。 迷宮で馴染みの竜に教えてもらった素材が使えると判明、それも用いスープを作ってみたら郷土料理で。セティの心を開くことに成功する。

 

これより始まるのは、セティの保護者としての日々。ファレルの後を追うように冒険者になったセティを導きながら、己に出来る事を。そこで関りを得ていくのは、単独で潜っていた所を助けられた僧侶、リィズ(表紙三人左)。更にはファレルの影を追い、聖騎士団の関係者であるフィア―ユ(表紙三人右)も姿を見せて。

 

「驚くのはもっともだが、行けるところまで行ってみることにした」

 

それぞれの思いと考えが交じり合ったり交差したりする中、迷宮に姿を現したのは迷宮を自身の領土に変える未確認の魔物。 戻ってこれなくなった冒険者達を救う為に出動し、セティ達と共に戦いを繰り広げ。その先、少しの心境の変化が一つの考えを導き出すのだ。

 

気のいいおっさんが大活躍、な一種の爽快感のあるこの作品。迷宮×おっさん、の作品を読んでみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 元聖騎士団、今は中級冒険者。 迷宮で捨てられた奴隷にご飯を食べさせたら懐かれました (ダッシュエックス文庫) : とーわ, 福 きつね: 本