読書感想:バグスキル【開錠】で最強最速ダンジョン攻略1

 

 さて、時々テレビ番組で開かずの金庫なりなんなりを鍵開け師の方々が開ける、という番組が放送されている訳であるが、開錠の様子を見て舌を巻いたりしたことのある読者様はどれだけおられるだろうか。僅かな引っ掛かりや感触から手掛かりを得、開けていく。手先の感覚の極致といった感じで、あれは絶対に真似できぬ、という思いを抱かれた読者様もおられるかもしれぬ。

 

 

 

しかしファンタジー世界には、鍵開けのスキル、いわゆる「開錠スキル」が存在している訳で。だが、ただ鍵を開ける、というのは果たしてどれだけ役立つものか。割と使えぬスキル扱いされている事も多いが。この作品はそんな作品である。

 

神が創った五大迷宮が存在し、日々冒険者達が攻略に励むもまだ半分も攻略されていない世界。「一日一回宝箱の鍵を開けられる」、というハズレスキル「開錠」だけを持つ新米冒険者、ロッド(表紙左)。かつて自分を救ってくれた冒険者に憧れ、彼の所属するギルド、「勇なる御手」の門を叩いた所、何とその冒険者は誰かに殺され、ギルドは解体されそうになっていて。ギルド再建の為、娘であるレイナ(表紙右)に頼み込み三カ月の猶予を得るも。S級冒険者、フィンのパーティーに参加させてもらった所罠に嵌められ迷宮最下層に叩き落とされてしまう。

 

「助けてあげようか?」

 

帰る道を探すために藻掻く中、声をかけてきたのは神様を名乗る少女、ラビィ(表紙奥)。彼女の導きで伝説クラスの武器を入手し、強力な魔物を退けて。ロッドはラビィから一つお願いをされる事となる。

 

それはかつて幾多の神と反目し、封印されるも今復活した夜神ネルトガを倒してほしいと言うもの。迷宮神であるラビィも襲われ力を封印されて迷宮の管理を奪われ。完全に迷宮がネルトガの手に堕ちるまであと数十年。その間に迷宮を攻略して欲しいというお願い。「勇なる御手」の再建の傍らでもいいというその願いを受けたロッドに、ラビィは残された力、二つのスキルを授ける。

 

管理者の地図、全ての迷宮の詳細な地図。全知の目、全てのスキルルートを見通す目。そして開錠する力。それが齎すのは、驚異的な成長。制限はあるけれど、やれることは正に無限大。共に冒険する事になったレイナのスキルも解放し、幾つのスキルも組み合わせた彼だけの戦い方を身に付け。あっという間に冒険者の中で名が売れていく。

 

「―――それも弱さ故のことなんじゃないのか」

 

迷宮の最深部、対峙する事になるのはネルトガに操られたフィン。突き付けるのは、真っ直ぐに成長していく力。弱さが根底ではなく、真っ直ぐな思いが根底にある力。

 

正に王道、一歩ずつ進むその面白さが堪らないこの作品。真っ直ぐな面白さを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

バグスキル【開錠】で最強最速ダンジョン攻略 1 (HJ文庫 そ 01-15-01) | 空埜一樹, もきゅ |本 | 通販 | Amazon