
笑い上戸、泣き上戸、それとも怒り上戸? 画面の前の読者の皆様の中にも社会人、という方は多いであろうが〇〇上戸、という意味はご存じの方も多いであろう。簡単に言ってしまうと酒癖、酔っぱらうと出てくる人格、のようなものである。お酒は誰かに迷惑をかけない程度に程々に、という注意はさておき。この作品のヒロイン、マイ(表紙)は「旅上戸」。酔っぱらうと旅に出る、というとんでもない酒癖である。
と、まぁこの作品はそんなとんでも、もといとびっきりの個性を持ったヒロインがいる訳であるがよく見て欲しい。この作品、GA文庫大賞で金賞+審査員特別賞、というとんでもない快挙を成し遂げている。社会人もの、しかも旅上戸という見たことのない個性でこれはとんでもない事と言えよう。では一体この作品にはどんなパワーが込められているのだろうか、と言うのを見ていきたい。
「この顔は仕様です」
ゲームのデバック会社に勤める青年、滉代。いつも鬼のような強面、能面顔で容赦なくバグの報告を上げ、とうとうついたあだ名が「不動明王」。
「その話、仕事に関係ある?」
『無理なら無理ときちんと伝えて。それが言えるのが大人なんだよ』
好きで能面面をやっている訳でもないけれど、元々能面面だったせいで誤解され勝手に怖がられ苦労してばかり。だが、マイだけは自分を怖がらずに怒ってくれた。そんな事もあって、滉代はマイのクールな一面に惚れこんでいたのだ。
「だって、想像できないじゃないですか。まさかこんなことになるなんて」
が、しかし。マイに声をかけて連れ出した飲み会の場、滉代はマイに酒を飲ますな、と上司に言われていた理由を知る。酒を飲んだ瞬間、まるで大阪のおばちゃんみたいなキャラになり、機密事項も乱発しまくり、更にはトイレから忽然と消えてしまい。手分けして探しに行くことになって、小田急の入り口で見つけるも、帰る事をかけた簡単なゲームに負けてしまい。箱根まで一緒に行くことに。
「うちがいるから大丈夫」
不動明王、なんて言われているけれど不安なものは不安。だけどマイの言葉で落ち着いて、箱根で見たことのない景色を見て。
「即刻罷免でお願いします」
だが早々、マイのお目付け役に任命されてしまい。休日、埋め合わせにいったお食事でマイが酒を飲んでしまい、今度は富士山を見せる為に高尾山へと連れ出され。そこで遭遇した後輩、須崎さんと遭遇し。滉代を連れ回している事に怒りを抱いた彼女とマイが、格ゲーで勝負をつけることになったり。
「―――楽しませるっていうのは、俺を強引に連れまわすってことですか?」
その中、須崎さんが滉代のことを実家の犬のように思っている泣き上戸、という事が判明したり。 思いもかけず急接近している滉代を見て、マイは富士山を見ずに帰ると言いだして。滉代も夜勤明けだったせいで厳しい言葉をぶつけてしまい、二人の関係は拗れることに。
「バカだな。ほんとうに、バカだ」
仲直りする間もなく発生するのは、マイの辞職騒ぎ。故郷である大阪へ帰るという彼女を探す中で察するのは、己の気持ち。何でもない子供のような感情。 知って、きちんと伝える為に、意外な電車に乗ろうとしていた彼女に追いついて。ゲームを通じて思いをぶつけ合って。
「ひとりじめ、させて?」
そして、マイが実は嫉妬していたと言う可愛らしい部分も明かされて。お目付け役としての日々が始まるのである、再び。
日本全国右往左往、ドタバタの中で新たな一面を知って恋をしていく。賑やかでこそばゆさのあるこの作品、ギャップのあるヒロインに酔いたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。