読書感想:剣鬼転生 極めし剣は魔術を斬り裂く

 

 さて、時に画面の前の読者の皆様は何か一つ、これは極めたと自分では思っている事はあるであろうか。ラノベとは関係ないが例えばTCG。所謂環境デッキと呼ばれるデッキでなくともそれを愛するからこそ突き詰めて使い続けたデッキ。 それを極めたのなら、どんなデッキが相手でも戦う事が出来て、どんな相手にも勝つ事だって出来るようになるであろう。

 

 

そんなたった一つを極めんとし、死亡して転生してもまた極めんとする者の物語なのであるこの作品は。

 

「頼むから・・・・・・がっかりさせてくれんなよ?」

 

剣は過去の遺物、剣士は魔術師には勝てない。そんな常識の根付いた世界、一度目の人生でとある剣士に魅せられ、基本的な技術を学び。しかしその身に才能はないと突き付けられ、平均的な剣士となり。最後は強力な魔物との戦いの中で、己に技術を教えてくれた剣士の強さに魅せられながら死んでいき。

 

「俺は魔術より剣を使いたいんです」

 

二度目の人生、それはエルドリア王国という国のレイノスティア侯爵家次男、クレイズ(表紙右)として。五歳の時、知らされたのは自分には魔術の素養がないと言う事。この世界、そして貴族社会に生きることになろうと言う者にとっては最悪な事実。だがクレイズには関係なかった。自身を溺愛する兄、ローウェンがいるから家を継ぐ必要もなく。 そして彼の身には魔術を使う素養はなくとも、剣に生きるには最適な素養があった。無論、今生も剣に行きたい彼からすれば魔術の使えぬ事なんてどうでもよく、寧ろこの状況は自身が望み焦がれたもので。

 

「クハッ、最高だな」

 

その道に進む為に両親を説得する為に、五年後に行われるお祭りで行われる闘技大会で優勝を誓い。 その為にクレイズは早速特訓を始める。自身のお付きである侍女、フリルを相手に技を磨き、街の外にいる魔物やら野盗共を辻斬りと言わんばかりに襲って狩りつくし。 子供にしては恐ろしくイイ笑顔で、加減しなくていい敵を嬉々として狩りながら、こっそり腕を磨いていく。

 

「それまでは精々、自分で考えるんだな」

 

そんな彼の嬉々とした輝き、良い笑顔をパーティーを襲った王女誘拐事件の中で目撃した侯爵家令嬢、アルセリア(表紙左)。天才ともてはやされながら親の操り人形でしかなく感情の死んだ彼女に興味を抱かせ、だが突き放し。二年後に迫った大会で戦おうと一方的に言いつけて。

 

「理由を、根底を思い出せ」

 

来たりた約束の時、決勝の場。 クレイズの本気で戦いたいと言う狂なる思いがアルセリアの仮面を打ち砕いて愉快な本性を露呈させ。 初めて本気となった彼女と、一歩間違えれば死ぬと言う望んだ戦いを楽しんで。

 

「・・・・・・絶対に逃がさない」

 

その先にアルセリアに執着される事になり。彼女に渡していた一つだけ命令できる権利を使われ。クレイズの新たな道が始まるのである。

 

心踊る死闘にヒャッハーと挑んでいく、いっそ清々しいまでの心が輝くこの作品。超常を技術で越えていく作品を見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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