読書感想:美来さんは見た目だけ地雷系

 

 さて。人間の本質を判断するにはまず関わってみて、その内面まで知っていかなければいけないと思うが、やはりまず、印象の大元となるのは外面であり。外面の多くの要素を構成するのは服装であると言うのは間違いないかもしれない。そう考えると、服装というのにも気を付けた方がいいのかもしれない。そんな服装の中でも、地雷系と呼ばれる服装があるというのは画面の前の読者の皆様もご存じだろう。

 

 

しかし、地雷系という服装を実際に着ている人を見た事のある読者様はおられるだろうか? いる所にはいるのかもしれないが、いない所の方が多いかもしれない。そんな地雷系、という服装を好む美来(表紙)がこの作品のヒロインなのである。

 

人を寄せ付けない孤高ぶりと、好んで纏う、周囲への棘となる地雷系の服装。クラスの中でも浮いている、そんな状況を気にもしていない彼女。

 

「おかえり」

 

「ああ、ただいま」

 

そんな彼女と級友である主人公、賢誠。小中と一緒のゆるふわギャル、希未にも気を付けなよと冗談交じりに言われて。だけど彼は、周囲には隠している事がある。それはとっくの昔に彼女に篭絡されていると言う事。日々バイトに励む苦学生、というのをひょんな事から知った美来が世話を焼いてくれて。妹であるありさもまるで本物の姉の様に懐いていて。料理を作って貰ったり、ありさの「みつめい」という名のお願いを一緒に頑張ったり。こっそりと秘密で、彼女と共に時間を過ごしていく。

 

だけどそれは、彼にだけしか見せぬ顔。当然、周りは誤解しているまま。希未も警戒心を向けているし、クラスの空気を掌握する教師、金子もまた身勝手にレッテルを貼っている。

 

「・・・・・・あなたの匂いがする」

 

だけど、賢誠だけは違う。そんな彼のある意味献身的な思いに、美来の中、我慢しようとしていた思いが決壊を始めて。どんどん我慢できなくなっていく。

 

その裏側、金子からの一言はとうとう賢誠の堪忍袋の緒が切って、逆鱗に触れ。美来の事を守る為、彼の事を追い落とす事に決め。周囲の協力を得、ある意味強引な一手を仕掛けていく。

 

「俺がただ、あなたが欲しかったから」

 

それは後々に禍根を残しうるかもしれぬ手、傷つけなくてもいい相手を傷つけてもしまう一手。 それでも成したのは、ただ美来が欲しかったから。ある意味歪んでいるようにも見えて、それはきっと真っ直ぐな思い。そんな思いが美来の心を溶かして。本当の意味で二人は結びついていくのである。

 

余計な色も味もいれぬ一対一の、溶けるようなラブコメなこの作品。一対一のラブコメを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

Amazon.co.jp: 美来さんは見た目だけ地雷系 (ファンタジア文庫) : 高科 恭介, ハム: 本