読書感想:都合のいい地雷系彼女とカラダだけの関係を

 

 さて、最近ラブコメの世界においては時路委ではあるが地雷系、と呼ばれるヒロイン像を見かける気がするが、こういったタイプのヒロインが今は傍流ではあるが、一つの流れを作り始めているのは最近からであろうか。そんな話はともかく、画面の前の読者の皆様は「地雷系」と呼ばれるファッションに身を包んでいる女性を見かけられた事はあるであろうか。 私は正直、ファッションには疎いのでそのような服装の判別があまりつかない訳であるが、独断と偏見で言わせてもらうと、やはり都会のような場所にこそいるのであろうか。

 

 

ではこの作品はどうなのであろうか。少なくとも言えるのは、今巻の表紙を務めるメインヒロイン、HNリヨンこと理世はガチな地雷系、という訳でもない。彼女はとある自分の正体を隠したいが故に、敢えて地雷系のファッションに身を包んでいるのである。

 

「その気になったら襲ってくれていいからね?」

 

と、ここまでで分かっていただけたかと思うが、彼女の中身は寧ろ真面目、清楚枠なのだ。そんな彼女がネトゲを通して出会ったのは、HNアキこと、彰人という青年。初めて、どんな外装でもなく自分自身を見てくれた相手であり、自分からの誘惑においても何とか耐えきった初めての相手。 そんな彼に特別なものを感じつつ、まず初対面オフ会の失敗を乗り越えるべく、何とか連絡し。彰人もまた応答を返した事で、また二人の関係は始まっていくのだ。

 

猫やフクロウ、トカゲ等が集まるカフェに行ったり、彰人の家に招かれてゲームをしたり。偶々夜、食べに行きたくなって、夜中にラーメンを食べに行ったり。何気ない、どこにでもいるようなごく普通の当たり前の日常を過ごしていく中で。

 

「ああ、だからアキくんだったのかな」

 

自分で選んだ彼との関係が、少しずつ特別なものになっていく。自分の中で、自分の正体に関する線引きがあるからこそ踏み込むのは怖いけれど。でも、彼なら、と少しずつ許せるラインが下がっていく。

 

その最中、彰人の元にも新しい縁が絡みついていく。 まだ処女だけど、恋人が途切れた事のない従妹の寧々が彼の部屋でぐだり。 ちょっとだけ親しいコンビニ店員の沙羅が彼に近づき、リヨンの正体を暴いていく。

 

 

「リヨンが俺の前でリヨンでいてくれれば、俺はそうと思って接するし、それしか出来ないから」

 

だけど、そんな事は彰人には関係なかった。彼が知ったのは、「理世」が最初ではなく「リヨン」が最初だから。 彼女がそうありたいと願うなら、自分もそうしたいから、と。 別の顔を受け入れられた事で、理世の中で、リヨンの顔がオフ用として定着していく。「共犯者」となった彼だけの顔、として定着していく。

 

「私が一番なら、それでいいよってこと」

 

心はあげられないけれど、身体だけなら。 他の誰と、でも、一番だけは譲れない。そんな何処か曖昧な、けれど特別な関係になっていくのである。

 

受容、がキーワードとなる、何気ない甘さが見所である今作品。そんな甘さが好きな読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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