さて、未来視、もしくは未来予知と言い換えてもいいかもしれないが、もし未来が視えたのなら、苦労せずに生きていけるのだろうか、と思うが画面の前の読者の皆様はどう思われるであろうか。個人的にはそう簡単には生きていけないのではないか、と思う。未来は多分、刻々と変化していくものの筈なので。きっとその時の先の未来を知れても、そう簡単には生きてはいけないのではないだろうか。
しかし、未来視というのは場合によっては便利なものであろう。例えば戦争、重要な場面で未来が視えたとしたら。それは得難き情報になるのかもしれない。この作品はそんな、未来視の能力で英雄になった少女、澪(表紙)をヒロインとしたお話なのである。
地球に突如、「IW禍」と呼ばれる外敵が現れ。異形の生命体である彼等の未知の技術による攻撃に圧倒され、種族全体の滅亡に近づくまでに追い込まれ。しかし「未来視」の力を持つ救世主が現れ戦局は逆転、地球規模で軍を再編成、人類一丸となって反撃し。多くの犠牲を払い世界各地に爪痕を残しながらも、人類は勝利した世界。
「戦いの終わった今、新しい仕事をお願いしたいんです」
復興も少しずつ始まった世界の片隅である日、澪のサポートを担当するグループ「α分隊」の後方スタッフとして戦争に参加していた基雄は招集を受け、かつての上司であった夢生から新たな仕事を依頼される。戦いも終わったし救世主だって日常に戻る、しかしプライベートは絶対に秘匿されなきゃいけないし、身の安全だって保障しなければいけない。と、言う訳でα分隊が引き続きサポートを担当する事になり。澪の傍で支えるスタッフとして基雄が選別された、という新たな仕事。
「わたしたち―――将来夫婦になるようですよ?」
未来視を信じられぬ、という基雄に澪は二人の未来を見てみることを提案し。見てみたらなんとびっくり、何という事でしょう。2人が夫婦になっている、という未来を予知し。
「わたし、憧れだったんです!」
一先ず始まる二人の生活。まずは転校先の高校、その前に同じマンションのお隣さんとして。少し不器用な彼女の手伝いをしたり、夫として手作り料理をおねだりされたり。
「ご想像にお任せします・・・・・・♡」
転校先での最初の挨拶、何故か澪が基雄との関係を仄めかして、学校での関係は級友、ではなく恋人同士となる事に。
「澪はもう、一生そこから逃げられないんだと思う」
生徒として潜入してきた夢生に見守られ、級友である「地元組」、芽依たちに正体を疑われ何とか誤魔化す為に奔走したり。 その中で見えてくる、澪が何を背負ってしまったのか、というもの。基雄に見せる素顔は年相応、時に小悪魔な純粋な少女。だけど彼女は救世主となってしまった。そして自分の為にも世界の為にも、その看板は下ろせない。その名前を背負い続ける為にも、時に自分を追い込んだりしなくてはならない。
それを知り、支えたいと思い動く、それが役目であるから。その最中、残存兵器の起動という事態の中で、力に関する認識から二人の気持ちがすれ違ってしまい、任務は解かれる事に。
「好きな女の子のところに行きたい! だから、協力してほしい!」
足りなかったのは何か、考えて。改めて自分の願いを見つめて。姉に手を借り、走る、彼女の元へ。伝えたい思いを伝える為に。
「そういう『今』も、ちゃんと見ていよう」
未来ばかりではなく、今隣にいる自分の事も。 今も未来も、全部見る。すれ違いを越え思いを取り戻し。また二人での生活が始まるのである。
世界観がちょっとシリアス、しかし主人公が割とスパダリだからこそ真っ直ぐなラブコメになっている、心擽られるこの作品。直球勝負なラブコメを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。