読書感想:捨てられエルフさんは世界で一番強くて可愛い!



 さて、例えばデュエマやヴァンガード遊戯王のようなTCG。更にはポケモンやモンハンのようなゲーム。様々なゲームにはそれぞれの世界に廃人、と呼ばれる人がおり。ランキング制度があるゲームにおいて、トップクラスの人達のプレイを見ると、目を疑うような神業が連発されていたりする訳であるが。自分には届かないと諦めるか、それとも真似をしてでも少しでも、とあきらめず頑張ろうとするか。それは各自の心によるだろう。

 

 

この作品はそんな、廃人が主人公であり。とある目的のために頑張るお話なのである。

 

三年前に発売されたPC専用、VRゴーグル必須の月額課金制、ファンタジーオンラインアクションRPG、「ヴァルハラオンライン」。こんなの今の時代だと絶対売れないだろう、と馬鹿にされてはいたけど今や爆発的にヒットしているこのゲーム。かつて声優として活躍はしていたがとある炎上で干され、今は引きこもりな女性、綾乃。ヴァルハラオンラインのトップ300人に名を連ねる彼女の元にある日、ゲームキャラである女神から届いたのはこの世界は実在する、この世界を救って欲しいと言う依頼。 受けた瞬間意識は闇に包まれ。まずは転生先の種族を選べ、と言われ。ダメ元でイベント専用のNPCの種族、ハイエルフを、と宣言したら承諾され。更に好みのヒロイン像を聞かれ、事細かに答え。彼女は浮遊島に住むエルフの赤ん坊、アヤノ(表紙)として転生する。

 

が、しかし。そんな種族を選んでしまったからか、転生早々忌み子として捨てられて。何とかヒップドロップを決めて着地して、母親が装備を落としてくれるも、十二時間に一度取れる花の蜜を吸って空腹を満たしつつ、単独で来る魔物を狩ってレベルアップし成長する、というスナイパー生活をする事となり。更には何とか成長し街へ出向いてみれば暴漢に捕らえられ売られそうになり、ととんでもなくハードな人生を送る事となり。

 

「お姉ちゃんが助けてあげるね」

 

そんな中、見つけたのは同じように囚われていた狐耳の少女。正に自分が望んだとおりのヒロイン、迷うことなく助け出して共に逃げ出して。ホムラという名の彼女とパーティを組み、共に過ごす事となる。

 

「ホムラはアヤノのお嫁さんになる」

 

嫁になる、と宣言してきた彼女を喜んで出迎え。彼女に隠し職業である「シノビ」になる為の訓練を受けて貰ったりしながら、自分も僧侶の職業につくために行動しつつ。そんな中、舞い込んでくるのは世界の危機に対処するための、プレイヤーにしか分からぬ招集のお知らせ。集まった五十人の中にかつての仲間達を発見し。自身が炎上した経緯を話したりして協力の約束を取り付けて。

 

「私ね、女神が嘘をついていると思うんだ」

 

その中、元廃人同士、このゲームのトッププレイヤー、としての視点で話し合い。共有した仮定の中に見えるのは、妙なもの。どうも女神は嘘をついていて。先に出来ていたのはゲームの世界、という事。その話し合いの後、夢の中で女神と会合し。最初から嘘に気付いていて、どうもとある事に気付いているけれど忘れさせられている、という事実も判明する。

 

「なのにこれじゃ真逆だよね」

 

どういうことか、気付きつつある事実。それはどうも、アヤノ達の生き様は何かの上位存在にエンタメとして消化されており、女神側は意図的に主人公という存在を創り出そうとしているらしいと言う事。 これ以上は探る余裕もなく、始まるのはイベント。八つの災厄、その一つ目。 MVP目指して最後は出し抜き合うけどそこまでは協力し合う、かつての仲間達との共闘が始まる。

 

その戦いの果て、最後の場面でアヤノがやらかしたのは、謎の行動。何とかイベントは乗り切るも、まだこれは始まりに過ぎぬ。矛盾に満ちた戦いは、まだこれからなのだ。

 

タイトルは明るく、しかし内容は重めな王道なこの作品。骨太めな作品を読んでみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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