読書感想:うちの清楚系委員長がかつて中二病アイドルだったことを俺だけが知っている。

 

 さて、中二病というと中二病でも恋がしたい! という作品が思い浮かんだ私はきっと京アニのファンであり古気味なオタクであると思うのだが。中二病、というのはいつか卒業するはずのものである。 卒業するはず、卒業しない人もいるのかもしれないが。では中二病というのは卒業したなら、その足跡は自分からはどう見えるのだろうか。

 

 

大体の場合においては、黒歴史に見えるだろう。 中二病というのは若気の至り、若い頃しか罹患できぬもの。しかし正気に返ったのなら。振り返るだけで恥ずかしいものになるかもしれない。この作品はそんな、中二病から卒業した少女、凪(表紙)がヒロインなのである。

 

「災禍の悪夢」と書いて「ナイトメア・ディザスター」と読む彼女。SNSでの活動が芸能事務所の目に留まり中二病アイドルとしてデビュー、頂点に上り詰めるその寸前で突如引退した彼女。そんな彼女の友人でありサポートも担当していた少年、玲緒。今は振り回してくれるものを失い、何処か燻るように日々を過ごしていた。

 

「とにかく今の私は昔と違うの」

 

そんなある日、一年生でありながら生徒会長選挙に出場しようとしている、級友の委員長、凪が実はメアであると気付く。何故引退したのか。それは単純、中二病から覚めたから。だけどきちんと引退するために課された条件は、生徒会長になる事。しかし今の凪は、覚めた反動か陰キャなコミュ障になっていた。

 

「・・・・・・お前に言われたら断れねえなあ」

 

更には勿論新人、コネも準備も下調べもない。そんな彼女は玲緒に白羽の矢を立て。断り切れぬという事で、彼はまた彼女をプロデュースする事に決める。

 

「どこ掘っても地雷出てくるじゃん!」

 

無論簡単な事ではない。そもそも凪が黒歴史を量産しすぎたせいで、地雷が多すぎたりするし。だけど楽しい。まるであの、特別な日々に戻ったように。

 

ライバルとして立ち塞がるのは、前生徒会長の妹、一颯。凪にも負けられぬ理由があるように、一颯にも負けられぬ理由がある。 戦略としての一環で策を打つ中、玲緒もその理由を知るようになっていって。 玲緒の思いを凪が邪推し誤解したりもする中。一颯の策で、一気に絶体絶命へ。

 

状況を再び覆すに必要なのは、何か。それは欠けているピースと抱いた違和感。そのヒントに気付いた時、覆す最後の奇襲的な策は炸裂して。

 

「悪くなかったなって、思ってほしかったんだ」

 

そして明かされる玲緒の思い。それは凪がとっくに気づいていたもの。お互いの空回りをすり合わせて。 特別を目指した二人の、何気ないごく普通な特別な日々が幕を開けるのである。

 

瑞々しい青春とバディものな情が光るこの作品。男女のコンビものが好きな読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

うちの清楚系委員長がかつて中二病アイドルだったことを俺だけが知っている。 (講談社ラノベ文庫 み 10-1-1) | 三上 こた, ゆがー |本 | 通販 | Amazon