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読書感想:双子まとめて『カノジョ』にしない?2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、今更確認する訳でもないがこの作品のWヒロイン、光莉と千影は双子の姉妹である。双子の姉妹というと私のイチ押し、そろそろアニメも始まるあのラノベも双子ヒロインであるが、あちらは三人で付き合う、とはならなかった訳で。 少し残念に思えど、それは考え方の違いという事で仕方のない事であろう。そしてこちらの作品では咲人は双子と同時に付き合う事になった訳で。つまりは同時に大切にし幸せにすることこそ彼の命題、と言えるかもしれない。
そして今巻におけるメインは千影。光莉に比べて少し積極的にはなれぬ控えめな彼女が抱えているものに迫っていくのが今巻なのである。
「うちとちーちゃんで六人ずつならっ!」
「発想が異次元すぎるからっ!」
三人で恋人同士となって初めて迎える夏休み。初めての三人だけでの旅行、それは双子子と書いてふたねこと読む、知る人ぞ知る田舎の別荘地へ。この地は猫が沢山いる穏やかな場所、しかし猫を見て千影はどこか、何か抱えている様子を見せる。
「ちーちゃんは、柚月ちゃんのことが許せるのかな?」
その様子が気になるのも早々、海辺の海の家で出会ったのは、新聞部の二年生の真鳥と、咲人の幼馴染の柚月。それぞれバイトには来ていたものの、アクシデントにつき厨房に立てる人がいなくて。 手伝いたい、と我を出す千影を光莉は鋭くたしなめるも結局は折れて、三人でお手伝いする事になる。
「その・・・・・・昔の咲人くんのことを教えてもらってもいいですか?」
そんな中で、柚月は少しだけ三人の形に迫ることになり。恋愛に不安を覚えそれでも頑張ろうとする千影に親近感を覚え、仲良くなり始め。
そこに絡まるように発生するのは、水着が流されたりと小さなアクシデントの数々。それは何故か。この島には双子に関わる悲しいお話があるから。 なればどちらかを選ばねばいけぬ、それが道理だとしても。三人で幸せになると望んだからこそ。迫っていくのは千影の心。 かつて可愛がっていて、だけどいなくなってしまった飼い猫が残した心の傷。
「千影のことを、きっと今でも大事な存在だと思っているから」
その傷に、山中で遭難してしまった時に向き合う事となり。咲人の言葉で、自分と飼い猫の形を思い返す。それはまるで咲人と柚月のよう。離れていても心は繋がっている関係、であると言う事。
「ほんと、感謝しかないよ」
「なんで、いっつもつまらなそうな顔すんだよ・・・・・・」
そんな彼女にいつも感謝をしている、とちゃんと伝えて。また三人での絆は深まって。だけど咲人は知らない。千影になら託せる、なんて考えている柚月の胸の内を。彼女の中、まだ治せていない傷があると言う事を。 だからこそきっとそれは。先に進むと言う意味でも向き合わねばならぬのだろう。
少し不思議なお話の中、千影との絆深まる今巻。シリーズファンの皆様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
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