読書感想:ダークエルフの森となれ ―現代転生戦争―

f:id:yuukimasiro:20200805232213j:plain

 

さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方はもし世界を敵に回すとしても叶えたい願いがあるとしたら、貴方は世界を敵に回せるだろうか。どれほど辛いとしても、世界を敵に回して戦うのならばそれは物語として名をつけるのなら、どんな名前が良いのだろうか。

 

輝獣と呼ばれる自然脅威が襲来する世界で、機動兵器を用いて戦う騎士候補生を育てる学園で学園生活を送りながら、優等生の仮面を被りながら生活する主人公、練介。しかし彼は何処か退屈していた。まるで温度が存在しないかのような無味乾燥とした日々を送っていた。

 

 

そんな彼の前に現れた女子高生、もとい異世界から転生してきたダークエルフ、シーナ(表紙)。彼女と出会った時、彼の世界は鮮やかに色付き始めたのである。

 

まるで猫のように自由気ままに、だけど時には女の子らしく。彼女と同棲する事になり始まっていく非日常。

 

だが、非日常はこれで終わりではなかった。この何処かSF染みた世界を舞台に、異世界で排斥されつつある種族の生き残りを賭けた大戦は幕を開けようとしていた。

 

その渦中へと、シーナの眷属の樹人として飛び込んでいく練介。

 

戦いの中、変化していく練介の想い。それはダークエルフという種族が好きという思いではなく、シーナ個人が好きであるという思いだ。

 

退屈していた、温度が無かった。その日々に刺激と温度をくれた。解放されたかった。この窮屈な自己を押し込める檻から。その檻から解放され、本当の自分自身で暴れられる場所をくれた。

 

何かを貰ったのはシーナも同じこと。自分の世界では居場所が無かった。誰からも命を狙われていた。だけど彼は、真っ直ぐな好意をくれた。

 

遂に訪れる決戦、そこで二人の思いが重なる時、シーナの本当の力は目覚める。

 

「・・・・・・俺は、君を守りたい。一度死んだ俺だからこそ、まだここにある命は、好きな子のために全部を使いたいって思うから」

 

そして、本当の意味で二人が一つになる時。現実世界にとっては恐怖の象徴であり二人にとっては無敵の姿である、一つの力が完成するのである。

 

 

この作品はSFである。ファンタジーである。そして、世界からはぐれた二人が契約を結び、世界の敵となるとしても己の道を往く事を決意する、身勝手な悪の黙示録なのである。

 

だからこそ、一筋縄ではいかぬ歯応えのある読み心地がこの作品にはあるのかもしれない。

 

普通とはちょっと違うファンタジーを読んでみたいという読者様、とりあえず高揚感を感じたいという読者様にはお勧めしたい。きっと満足できるはずである。

 

https://www.amazon.co.jp/dp/4049132745/?tag=a8-affi-287285-22&a8=e.pP1.C9djzlCvAaAEQA.pz-zqSOcqfaFEQiCvQvziI9djpzlq7eQqpW7jKU0UfQViyqaMpuV.pPws00000009884001