さて、時に画面の前の読者の皆様はサディストであろうか、それともマゾヒストであろうか。因みに私はノーマルである。どちらでもない。そう言う方の方が多いであろう、かもしれぬ。しかし、生きる上においてはサディストとマゾヒスト、どちらが生きやすいのであろうか。その答えは各自考えていただくとして。ラノベの世界においてはサディスト、マゾヒストというキャラ付けは中々見かけぬ気がするのは私だけだろうか。
何故、ないのだろうか。描写がしづらいからだろうか、それともノーマルの方が都合が良いからか。それはともかく。この作品はマゾヒスト、な主人公という滅多に見ない主人公のお話なのだ。
「災難だったねぇ、キタロー君」
常に自信なさげ、病弱で運動神経壊滅、片目を隠した髪型の通称「キタロー」、陸人。異様に自己評価が低い彼、しかしよく見れば成績優秀、性格も優しく、判断力と理解力もいい。そんな彼には願いがあった。
「なかなか難題だ」
それはクラスの「オタクに優しいギャル」、響（表紙）に冷たい目で軽蔑されたいというもの。何を隠そう彼は「ドＭ」。その目的を達成する為、自身の所属する「文学部」、もとい「ドＭ倶楽部」の仲間達。将来の進路がほぼ力士で内定な帆立（ドＭ）、和風美人な相撲マニアの紅一点、蘆花（ドＭ）、巨大企業グループの次男の生徒会長、信念（ドＭ）、陸人の幼馴染のチャラ男系陽キャ、義冬（ＮｏドＭ）に相談し。まずは段階を踏んでという形で動き出す。
「そうだな。ぶっちゃけ両想いの目、結構あると思うよ」
しかし周りの目から見れば、響は陸人に特別優しくて。両想いの目もありそう、しかし陸人の自己評価と考え方がバグってしまっているので、軽蔑されたい、という方向に行っているのを見守られつつ。 段階を踏んでいこうとしたら、何故か響との距離が近づいてしまう結果となって言って。気が付けば、彼女の事情を知ったり、一緒に出掛ける予定が立ったりして。その下見の為に蘆花と一緒に出掛けたら、それを何故か一人で来ていた響に目撃されてしまって。
「あたしがキタロー君を好きだか、ら」
「そりゃ、わたくしも狭間さんが好きだからですよ？」
さぁここからはお立合い、見逃し厳禁。唐突にぶつけられる響と蘆花の告白、板挟みとなって選んで、とお願いされ。付き合うと何が良いのかというプレゼンバトルが勃発したり。
「ほっぺたにキスされた」
更には、ドＭ倶楽部への匿名のタレコミ、そして家宅捜索から、風紀委員長であるアリスの秘密を探ることになれば、実は彼女がむっつりスケベであったと判明し、彼女ともフラグが立ち。一気にモテ期が到来し、とんでもない混沌が始まっていくのだ。
全員キャラが濃い、まさに天地カオスなラブコメであるこの作品。まるでおもちゃ箱をひっくり返したようなラブコメを見てみたい方は是非。きっと貴方も満足できるはずである。
すべてはギャルの是洞さんに軽蔑されるために! (講談社ラノベ文庫 た 8-1-1) | たか野む, カンミ缶 |本 | 通販 | Amazon
