読書感想:我が焔炎にひれ伏せ世界 ep.1 魔王城、燃やしてみた

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様は目の前の何かを壊してみたいと思った事はあられるであろうか、ムカつくアイツの息の根を止めたいと思った事はあられるであろうか。しかしそう思ってもやってはいけない。何故ならこの社会は法治国家であるので。ではそんな望みが叶うとしたら何処なのであろうか。それ即ち、異世界であるのかもしれない。

 

 

百年前に、一国を一人で壊滅させる程の魔王との死闘の果てに討伐し、だが現在に立ち戻って今、魔王が復活してしまったとある異世界。その世界の創造主である女神様は、自身の世界を守る為、異世界(というか日本)から死した五人の少女達を呼び寄せる。

 

―――が、しかし。呼び出された少女達は「正義の味方」などでは決してなかった。その在り様は「悪の敵」。一線振り切れた、制御不能の危険人物の集まりだったのである。

 

人体実験とB級映画好きなマッドサイエンティストのサイコ、悪を切りたい人斬り女子高生、ジン、地球外の文明で創られ人間により改修されたアンドロイド、プロト、機能不全の生物兵器、ツツミ。そして人体発火能力を持つ一応一番の常識人、ホムラ(表紙)。

 

「うん、無理だな!」

 

「ですね!」

 

異世界に転移して早々、高名な人物であるグルドフが襲撃を受けている場面に遭遇し、我が意を得たりと言わんばかりにサイコやジンが暴れ回り。あっという間に場を納め半ばお礼をもぎ取るかのように、グルドフの家を拠点にする事を決め。魔物を殲滅する部隊である「殲剣隊」に入隊する事を求められ、入隊試験の場に乱入しホムラが火炎瓶でサイコを燃やしてしまったりしつつも、何とか一員となり、異世界で戦う力を得るための訓練が始まる。

 

治癒魔法を覚えたサイコの手により、ツツミの真の力が目覚め、プロトも自分の戦い方を認識し。彼女達が成長を続けていく中、一人自分の力を制御できず、何処か煮え切らぬ自分の心の中の枷を感じもやもやするホムラ。

 

だがそんな中でも、容赦なく世界は進んでいく。初任務で長閑な村を脅かす魔物の討伐に向かえば、もう一つの案件として盗賊団という脅威を発見し。点数稼ぎの為に盗賊退治に向かったら、自分達の力では勝てぬ敵に出会い、更には事態の裏で糸を引いていた身近にいた黒幕が、魔王から授けられた禁断の力を発動させ、サイコたちを地に沈める。

 

「お前みたいな『理不尽』を焼き尽くしたいんだった・・・・・・」

 

一人残され、理不尽に怒り全力を出せど届かず。今際の際、思い出すのは己の最初の願い。

 

「そうですか、死んでください」

 

 その思いのままに、浅ましい自分の願いを受け入れ。その途端、ホムラから溢れ出した業炎が黒幕ごと全てを焼き尽くす。オーバーキルにも程がある、どちらが魔王軍かも分からぬ程の極大火力で。

 

二度目になるが彼女達は「正義の味方」ではない。「悪の敵」である。寧ろ自分の目的のついでに世界も救ってしまおうと言う、頭のネジの外れたイカれた奴等の集まりである。

 

その有様、正にアウトレイジのように。だが己の心のままに全てを蹂躙し、世界から外れた者同士ですちゃらかな会話劇をドタバタと繰り広げる。その様は、正にはじけるような爽快感と面白さを持っているのである。

 

いつか魔王城を巨大なキャンプファイヤーに変えるこの作品、言ってしまえば賛否両論、読み手を選ぶかもしれない。だがもし読み手として、迎合したのなら。この作品は正に最強の面白さを見せてくれるはずである。

 

いともたやすく繰り出される外道と熱さに元気になりたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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