読書感想:クラスで一番かわいいギャルを餌付けしている話



 さて、何事も言わなければ伝わらぬ。隠し通していては、何も分からない。それを読み取られない限りは。何が言いたいのかというと秘密の関係、というものである。秘密の関係というのはいつかバレるものかもしれないし、自分達から明かすものかもしれない。実際、秘密の関係を描くラブコメというのはそういう展開が面白いものであろう。 それを隠し通し続ければどうなるのか。

 

 

いつかは話すべき、かもしれぬ。でも今は、と思うかもしれぬ。だけどいつかは明かさなければ。抱え込んでいれば。取り返しのつかぬ破滅を招くかもしれない。この作品はそんなお話なのである。

 

「やっほーオタク君達ー。またアニメの話ー?」

 

高校入学後、一月もしたらクラスの立ち位置というのは決まるもの。真面目なオタクである主人公、鳳理。友人であるツナ吉と菊太郎と日々、誰にも目を付けられる事のなくオタク談議に花を咲かせる日々。しかしその平穏は時に破られる。何故か時々話しかけてくる、モデルも務める、クラスの中でも一軍の女子、桜(表紙)が。彼女が話しかけてきただけで彼らの話はクラスに拡散し、いたたまれない思いをしてしまう。

 

「むー。これは妹としてじゃなく、恋人としての頼み!」

 

彼女の方に悪意はないと分かっているからこそ、拒みきれぬ。 だが鳳理には友人達、それどころか周囲全てに隠している事がある。それは、実は桜とはひとつ屋根の下に共に過ごす義理の兄妹であり、更には恋人同士。正に属性の数え役満か、とツッコミたくなるような関係だったのだ。

 

だけどその関係は秘密、周囲には明かさない。桜もまた、実はオタクであると言う事を隠している。だからこそ家では甘々に。オタクグッズに異様な執着を見せる鳳理に桜が呆れたり、オタク向けな講義をしてあげたり。

 

「あなた達、恋人同士なのかしら」

 

マンションでの隣人である、実力派人気声優のミノルと百合なお付き合いをしている大学生、学に二人の関係を看破され。彼女の恋人同士の関係を父親から隠す為に一肌脱ぐことになったり。

 

「迷惑だと思ってる」

 

「私、どこで間違えちゃったんだろう」

 

色々な事がありつつも、何気なくも平和。しかしその平和の裏、隠れていたのは不満。ひょんな事からツナ吉と菊太郎が明かすのは桜への不満。 桜からは、計算していたから大丈夫だと思っていた。でも読み切れず勘違いしていた。 燻り芽を出した不満、果たしてどうすべきなのか。お互いに迷う中、桜は傷つき姿を消してしまう。

 

「でも、もうそれだけじゃダメなんだ」

 

今までだったらなあなあで済ませていたかもしれぬ。だけどもう知ってしまった、彼女の大切さを。 それだけじゃ嫌だ、と。 再びまた隠す事を選び、だけど絆は強くして。また二人の日々に戻るのだ。

 

割と真面目、未熟な二人の思いが初々しくて眩しいこの作品。純なラブコメを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

クラスで一番かわいいギャルを餌付けしている話 (HJ文庫 し 09-02-01) | 白乃友, ぶし |本 | 通販 | Amazon