読書感想:世界最強のジョブ・レンダー《職業貸与者》 ~パワハラ勇者パーティーから追放された少年の異世界無双~

 

 さて、お金を貸したものは取り立ててくるし、お金に限らず借りたものは返さなければいけない。そう考えると、物の貸し借りと言うものは慎重に行わねばならぬものであるので、きちんと信用できる人に貸す、という行為を心掛けていきたいものである。さて、ではこの作品はどういった作品であるのか、という訳であるが。タイトル通りである。職業を貸せる、というジョブが切り札となる作品なのである。

 

 

魔王や魔王軍四天王、魔物や冒険者と言った存在が普通にあるとある異世界。この異世界においては、十五歳となった者に天職が与えられる世界であり。唯一無二のスキル「職業貸与者」を得た少年、トール(表紙右下)はラカム、メアリー、ルード、グランという四人の幼馴染達と魔王を倒すための勇者パーティとして冒険の旅に出る。

 

「お前達に貸してた職業、返してもらうからな」

 

 が、しかし、いつしか自分達のジョブの強力な力に驕ったラカム達四人は、只の荷物持ちであるトールを次第に邪険に扱うようになり、あまつさえ彼をパーティから追放してしまう。だが彼等は知らなかった。彼等のジョブはトールが貸しているものであるという事を。一定範囲内の四人までの味方に、例え伝説級のジョブであっても貸せる「職業貸与者」。そのスキルがあってこその強さであった、という事を。

 

当然そのジョブは、トール自身にも付与できる。その力の枷が解かれた時、彼の冒険が始まる。一人になって歩き出した先、幼馴染であるセシリア王女(表紙左上)と再会し、彼女の故郷を襲う魔王軍を「職業貸与者」のスキルを活かして救う事となり。セシリアをお供に、冒険者として旅に出る。

 

しかし勇者パーティの一員であった、という記録とそこから来る期待はトールにまだついてくるものであった。そして今のトールにはそれを叶えて見せる力がある。ドラゴンからエルフの国に封印された邪神まで、様々な敵をセシリアと途中で仲間になったエルフの王女、セフィリスと共に戦い抜いて討伐し。あっという間に彼等は冒険者として成り上がっていく。

 

それと反比例するかのように、ラカム達は落ちぶれていく。身の丈に合わない依頼ばかりを受けて失敗し周囲からの失望を集め。魔王軍四天王の一人、ルシファーの諫言に乗り禁断の力に手を染める。

 

そんな彼らと激突する事となるも、正道を行くトールたちに勝てる道理もなく。殺すまでもないと力だけを祓い戻る先、ルシファーが率いる軍勢による王都襲撃が幕を開ける。

 

「いこうぜ! みんな!」

 

王都も王族たちも守る為に奮戦するトール。そこへ助成するのは、本当の意味での身の程を知ったラカム達。勇者じゃないけれど、今の自分達でも出来る事をすると、弱い力でも奮戦する。

 

「頼んだぞ、お前達」

 

そして、ルシファーとの決戦の場。再び駆け付けたラカム達に、トールが一時的に空いた枠を最大まで生かして四人にジョブを付与し。勇者パーティの有終の美を飾る、最後の活躍が幕を開ける。

 

その先、仲直りをしたラカム達から世界を託され。思いを受け継ぎ、トールたち三人の旅が始まるのである。

 

なろう的な王道である爽快感と、立ち直りの温かさがあるこの作品。王道ちっくな面白さを楽しみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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