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読書感想:男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 2. じゃあ、ほんとにアタシと付き合っちゃう? - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、運命共同体という名の親友である悠宇と日葵であるわけであるが、その想いは果たして本当に隠せるのか、隠し通せるのか。ずっと離れない、なんて本当にできるのか。彼女の人生も、彼の人生も、極論してしまえばそれぞれのものである。そんなものを交わらせずして、本当にこのまま並び立っていけるのか。まだまだ揺らぐ、もっと揺らぐ二人の関係。その第一ラウンドが終了するのが今巻であり、大人達の横槍が彼等の決して強くない、等身大の心を揺らしていくのが今巻なのである。
「じゃあ、ずっとアタシだけ見てくれる?」
過去に投げられたその問いかけに対し返した約束、それは悠宇の心の中に今もずっとあるもの。だがしかし、中学生であればまだ友情で済んだかもしれないその気持ちは、大きくなるほどに変質していく。変わらぬ想いなんて本当は無い、と言わんばかりに。
「”ずっと離れない”なんてエゴだよ~?」
更に彼等の関係を揺らす影がまた一つ。その名は紅葉。東京で人気モデルを務める女性であり、日葵を東京へ連れに行こうとやってきた「大人」である。
大人としての含蓄ある言葉に揺らぐ心、だが黙って日葵を連れていかれるわけにはいかない。紅葉の提案による、「夏の思い出」という題材の本気のアクセサリー勝負。
しかし、夏の思い出を探し凛音も共に色々と奔走する中、日葵の想いは更に大きくなり、暴発の時を迎えていく。
「親友」であろうとした、「運命共同体」であろうとした。だが自分の心はそう簡単に騙せるものじゃない。大人であればつける嘘は、子供には簡単につけるものじゃない。
「親友」の証を外し、踏み出したその一歩。けれど皮肉なことに、その一歩は悠宇の心を揺らし決壊させ、最悪の結果を招く事になってしまう。
容赦なく下される判定を覆せる材料も、反論する力もなく。決まってしまう勝負、離ればなれになりそうになる二人。
「でも一番欲しいものは、なんでか素直に言えないんだよね」
だけど、いくら隠そうとしても心に嘘はつけない。例えこの恋が罪だとしても、多くの人を傷つけるだけだとしても。手放したくない罪がある。
だからこそ、今は心をさらけ出して強欲に。若者の特権、それは全てを賭けて何でもできる事。大人の思惑なんか関係ない、自身と言う駒を動かせるのは自分だけ。故に踏み出し、否定を告げる。頼れる兄の後押しを背に、己の意志を。
「だから、店を持つまでじゃない。俺の我儘を、ずっと隣で見ててくれよ」
新しく結ばれたその関係、名付けるならばなんとつけよう。「運命共同体」と言う名の「きょうはんしゃ」。恋人よりも深い関係で繋がった二人の関係は、しかし恋の色をしていない。
更にエグく、心震わせるシリアスの中に迸る想いの熱さが光る今巻。
前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!) Flag 3. じゃあ、ずっとアタシだけ見てくれる? (電撃文庫) | 七菜 なな, Parum |本 | 通販 | Amazon