読書感想:ねぇ、もういっそつき合っちゃう?1 幼馴染の美少女に頼まれて、カモフラ彼氏はじめました

f:id:yuukimasiro:20210729230103j:plain

 

 さて、趣味の合う友人と言うものは貴重な存在である。故に大事にしなければならない。そして、同じ時間を過ごす事で往々にして恋と言うものが芽生える事は、ラブコメという世界においてよくあることである。では、ラブコメの始まりとして「趣味の合う幼馴染」と「偽装の恋人関係」から始まるラブコメ、というのはどのくらいあるものなのだろうか?

 

 

リアルは充電系、様々なオタク系趣味に自身の有り金をつぎ込み、日々オタク友達と議論したり何気のない事でバカ騒ぎしたりする少年、正市。

 

 そんな彼には、美少女であり同じオタクである友人でもある幼馴染がいる。彼女の名前は十色(表紙)。いったん離れてまた再会した系の、学校一の美少女である幼馴染である。

 

学校ではオタクグループとリア充グループという、天と地のような関係。だが誰も見ていない所では、正市の部屋で共にゲームに興じたりと、まるで小学生時代のような可愛らしい友情を育む二人。

 

「もういっそ付き合っちゃう?」

 

 そんなある日。唐突に十色に誘われ訪れた思い出の場所で。正市は突然、十色に偽装カップルにならないかと提案される。

 

もっと正市と遊びたいから。男の絡むリア充グループの関係性が疲れるから。そんな理由もあって、ならば偽装カップルになれば良いと十色は提案し、オタク活動を手伝ってもらえると言うメリットの元、正市もその提案を承諾する。

 

 だが、二人の関係は周りの人間にとっては正しく青天の霹靂。どうしても良い反応も悪い反応も招き寄せる。そして、その反応の裏で二人もまた、新しい関係性に困ってしまう。

 

正しく以心伝心といった感じで昼食のおかず交換は行えるのに、手を繋ぐこと一つとっても難しくてもどかしくて。

 

今までは出来た、ほぼゼロ距離での語らいが出来なくて。偽装だけれどカップルと言う関係が、どうしたってお互いが異星だと言う事を意識させてしまい、歯車がいつも通り噛み合わなくなる。

 

 そんな中、正市に向けられる心無い言葉。仕方のない事なのかもしれない、不特定多数の認識では釣り合ってはいないのは正市の方なのだから。

 

「俺を、十色にお似合いの彼氏にしてください」

 

だからこそ彼は決意する、十色に相応しい自分になる事を。その願いを受け、十色も彼に向き合う事を選び。まずは髪型の改造から始め、服装の改造といったところからコーディネートしていく。

 

 その成果が表れる校外学習。しかし、十色の心の中に走るのは自分の勝手な心の痛み。彼を変化させたのは自分だけど、彼には変わってほしくないという身勝手な思い。

 

偽装カップルである前に自分達は幼馴染であり、オタクな同士であり。だからこそ心裏腹、矛盾は心を苛んで。

 

「十色がどんなこと考えてるかなんてだいたいわかる」

 

だけど、正市は駆けつけた。自分の望みを分かってくれた。それはカップルではなく、幼馴染として積み上げた時間があるから。

 

月に揺れる花は、揺れるだけか。空に続く路があるのなら、月の元に駆けあがってもいいはずだ。

 

お互いが大切にしているものを変える事無く、新たな関係性を付加していく事で新たな関係を創り出す、その中で確かに恋が芽生えていく。

 

だからこそ、この作品は心躍る。心がワクワクするような面白さと甘さがあるのである。

 

幼馴染系ヒロインが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

ねぇ、もういっそつき合っちゃう? 1 幼馴染の美少女に頼まれて、カモフラ彼氏はじめました (HJ文庫) | 叶田キズ, 塩かずのこ |本 | 通販 | Amazon