読書感想:無能と言われ続けた魔導師、実は世界最強なのに幽閉されていたので自覚なし2

 

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読書感想:無能と言われ続けた魔導師、実は世界最強なのに幽閉されていたので自覚なし - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で帝国最強の一人を圧倒的な力でぶちのめし、聖法教会にその存在を知らしめたこの作品の主人公、アルスであるが。聖法教会側においては既に彼は重要人物、しかし魔法サイド側においても彼は、知られてしまえば即座に重要人物にカテゴライズされる事になるだろう。その時、真の意味で世界は彼を中心に動き出す事となるのだろう。そこに進んでいく、言わば前後編の前編となるのが今巻なのである。

 

 

「―――人間だったのよ」

 

その呼び水となるのが、任務での遠征中に魔導師に追われている所をアルスが保護した少女、シオン(表紙左)。記憶を無くした魔族の少女、ではない。彼女はカレンとエルザにとって既知の相手。だが彼女は、三年前まで確かに人間であった筈であった。決して魔族などではなかった筈なのである。

 

その事実が指し示すのは只一つ。この都市に蔓延っている正体の見えぬ闇。そこにこそ全てを解き明かす鍵がある。ユリアはヴェルグより、シオンが人工的に禁忌の魔術で作られた魔族であると言う情報を入手し。カレンは敵の拠点を虱潰しに捜索し情報収集を始める。

 

「―――アルスを見ている時だ」

 

「悪かったな。今度は背中を流すよ」

 

無論、それだけではない。お留守番としてユリアとシオンがのんびりとした時間を過ごす中、ユリアの笑顔の裏に隠れたアルスへの狂的な思いを感じたシオンが恐怖に震えたり。遠征先でとある出来事とアルスのある言葉で掛かり気味になってしまったエルザがはしごを外されたり。相も変わらずアルスが鈍感さを発揮したり、と穏やかな時間は流れていく。

 

けれど、平穏は長くは続かない。カレンが掴んだ情報の中、糸の先に繋がっていたのは「魔王」の一人。その「頭脳」と呼ばれる男、クリストフを捕まえるべくカレンは誰も巻き込まんと動き出す。

 

「オレがいるだろ」

 

しかしそこへアルスが訪れカレンを諭し。シオンを助けた者として自分も責任を取るべく、カレンの助けを求める言葉を引き出して。二人でクリストフが待ち受ける拠点へと向かっていく。

 

 だが、たとえ大きな力を持っていても。「天領廓大」という極致に辿り着いていても。守り切れぬものが、ある。アルスが露払いをする中、クリストフを退けたカレンと、合流していたシオンが魔王に襲撃され。シオンがカレンを庇い凶刃に倒れてしまう。

 

「オ マ エ か」

 

その瞬間、世界は雑音の果てに音を無くし。ある意味純粋が故の混じり気の無い殺意が魔王へ向けられる。

 

次回、待ち受けるのは魔王との戦いか。魔法の極致に至る敵を「黒き星」は墜とすことは出来るのか。

 

更に面白さ深まる今巻、前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

無能と言われ続けた魔導師、実は世界最強なのに幽閉されていたので自覚なし 2 (オーバーラップ文庫) | 奉, mmu |本 | 通販 | Amazon