読書感想:裏ギャルちゃんのアドバイスは100%当たる 「だって君の好きな聖女様、私のことだからね」

 

 さて、表と裏という言葉は表裏一体という言葉にもなるが、表と裏、というのは真逆である事が多い、というのは画面の前の読者の皆様もご存じではないだろうか。例えば二重人格のキャラ。その表の人格と裏の人格は、全く以て真逆、という事が多いであろう。そんな表と裏は、繋がりがない事も多々あるであろう。

 

 

ではもし、表と裏が同じ目的のために協力したとしたら? というのがこの作品と言える、のかもしれぬ。まぁ表と裏、と言っても二重人格という訳ではないのだが。

 

何処にでもいる平凡な男子高校生、探っても何も出てこない少年、文太。彼の日々の癒し、それは通学電車の中に。途中まで同じ電車の中にいる、他校の女子生徒。まさしく聖女のような彼女の事を、脳内で勝手に「聖女様」と呼び。しかし内心の感情は推し、のようなもので。一目見て心浄化されて満足、という現状に満足していた。

 

(うわあ・・・・・・またオタクくんこっち見てんじゃん)

 

その視線に聖女様、本名結衣。彼女は気づいていた。名家の令嬢である彼女は幼い頃から人の視線、其処に込められた感情に敏感であり。文太の視線、そこにぎらつきがない事に不思議さを覚え。興味を持って接触してみようとする。

 

「ずいぶんと落ちこんでるじゃん。もしかしてお目当てに会えなかったとか?」

 

その時の顔、それはギャルとして。実はこっち、フレンドリーなほうが彼女の本性。接触してみて、彼に裏心がないと知って。裏川(表紙)と名乗って。彼に接していく事とする。彼女の親友を装って。

 

「これからも表ちゃんにお行儀よくするなら私が助言してあげる」

 

庶民のサンプルとして紹介してあげると嘯き、「聖女様」を攻略する手伝いをしてあげる、と囁いて。見事に正体に気付かない文太は、裏川さんな彼女を師匠として尊敬し。彼女の言葉に従い、「聖女様」の方に話しかけて。裏川さんな彼女とは、時に軽妙な掛け合いをしながら仲良くなっていって。

 

「私はこの関係、結構気に入ってるから」

 

時に些細な誤解からすれ違ったりしてしまって。何とかしないと、と奔走する中で見えてくるのは文太の心。表と裏の彼女、二人に同時に魅力を感じていると言う心。同時に見えていくのは結衣の本心。表の自分、裏の自分。彼の事を時に翻弄したり、時に彼の無自覚女たらしな一言を食らったりするこの関係を気に入っているのだ、と。 些細なすれ違いを越えて仲直り、その先に見えてくるのは無自覚に切り開きかけている新たな道なのだ。

 

マッチポンプ、その名の通りに翻弄される、その中に確かに始まっていく甘さがあるこの作品。振り回してくるヒロインが好きな読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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