読書感想:愛され天使なクラスメイトが、俺にだけいたずらに微笑む 1

 

 さて、綺麗なバラには棘があると言うけれど、どんなに綺麗な人間であっても隠している棘がある、その棘とのギャップが魅力、と言えるのかもしれない。しかしここでふと思うのだが、最近天使だの聖女だの女神だの、と綺麗な枕詞が付くヒロインが増えてきてはいないだろうか。そのようなヒロインの魅力とはどの辺りを言うのか。文字通り天使のような清楚さかもしれない。もしくは裏に隠している棘とのギャップなのかもしれない。

 

 

ではこの作品のヒロイン、千佳(表紙)はどうなのであろうか。彼女もまた、「安らぎの天使」と呼ばれる愛されキャラである。しかし、主人公である颯真にだけ、悪戯で小悪魔な顔を見せてくるのである。

 

「俺専属の試食係に、なってくれないだろうか」

 

将来の夢はパティシエ、その為に日々独学で様々なお菓子を作り、級友に試食をしてもらう日々。しかし専門家でもない級友達からは、詳しい意見は貰えず。そんな中、千佳の詳しい意見の理由を聞くと、実は彼女の両親はパティシエとパティシエールというまさかのサラブレッドな家系であると言うのが判明し。彼女もまた舌が肥えている事が判明し、試食係になって欲しいとお願いする。

 

そんなお願いに、千佳も変わりたいと思う自分を見守っていて欲しいと言うお願いを返し。ここに協力関係は結ばれる。

 

「冗談なんかじゃありません。本気でそう思っているんです」

 

が、しかし。その関係を結んだ途端に千佳が見せてきたのは、小悪魔な一面であった。親友にも、それこそ他の級友にも。愛されキャラであるからこそ誰にも見せないその一面。時に彼をからかい、時に笑って。そんな顔で彼女は彼を振り回していく。

 

時に二人でゲーセンに行ったり、いつものイメージとは違う服を着た大人っぽい姿で揶揄って来たり。ふとした切っ掛けから、千佳の両親とも会う事になったりして。

 

気が付かない間に、距離感がどんどん近くなっていく。刺激的な彼女との時間がどんどん当たり前になっていくにつれて、自分しか知らない彼女の顔がどんどん増えていって。無自覚に恋人同士、と言っても過言ではない空気を醸し出す二人は、絡んできた千佳の親友、未希の干渉をも跳ね除けるいちゃいちゃを見せつける。

 

外から見れば既に恋人同士、けれどまだまだその関係は友人同士。だけど千佳の心の中、大切な思いは既に芽生え始めている。隣にいるのが彼である、という夢を見るくらいには彼の事が大切である、という思いが芽生え始めていく。

 

丁寧に作られたお菓子のように甘く、ふわりとラブコメの香る今作品。お砂糖多めなラブコメを読んでみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。