前巻感想はこちら↓
読書感想:教え子とキスをする。バレたら終わる。 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で指導役であった暮井の弱みを握った事でこれからも続くことになった、銀と灯佳の秘密の関係であるが。ある意味まだ子供であるこの二人の関係、しかし曲がりなりにも銀の方は、一応は大人であり。灯佳よりは色々な経験をしてきているのである。つまり言ってしまうと、灯佳は初めての恋人、という訳ではない。これは言うまでもないことかもしれないが。つまりは元カノ、という存在も普通にいるのである。
それはもう、前巻の最後にひょっこりと姿を現しているであろう、ユズこと柚香。弱みを握られている訳ではなく、とある恩が向こうにはあるから。だから、そう簡単には突き放せぬ相手なのである。
「今度は離さないし、離れないから。・・・・・・また、一緒になれない?」
「・・・・・・あーあ。なんであたし、こんなに重たい女になっちゃったのかなあ」
同棲中だった恋人に、暴力を振るわれて追い出されたという経緯で、気が付けば銀の家にやってきていた彼女。一先ず行く当てがない、という彼女を何もせぬとの条件の元に家に泊めることになり。 しかし、柚香の中で、捨てきれなかった銀への思いはまた燃え上がっていた。大学時代は後腐れなく軽くデキる、が持ち味だった筈なのに。 銀という存在の温かさを知って、埋められて。だけど些細なすれ違いで別れて。だけど、いつの間にか重くなっていた。だから今度は手放したくない、と。定めたルールを守った上で、心の境界線を乗り越えようとして。柚香は家、というテリトリーで銀に迫ろうとする。
当然、どうなるかはお分かりであろう。学校では灯佳、家では柚香との板挟みである。銀の中に自分ではない女の影を感じた灯佳は嫉妬に駆られ。銀としても、彼女が今は隣にいるからこそ大事にしたいから、と。柚香のいる家から離れ、灯佳の家でのプチ同棲をする事となり。並行して学校で進む文化祭の準備に、四苦八苦しながらも。一応の節度は保って、その覚悟を持って。同棲の中で少しずつ絆は深まっていく。
だが、それで柚香の方が納得するのか、というと無論そんな訳はない。絶対に諦められないからこそ、教えてくれない事情が気になって。独力で突き進んだ先に、銀の抱えていた秘密にまで辿り着いてしまう。
「たとえそうでも、俺はお前を選ぶよ」
もう一度選んで、と差し出される手。だけどそれを選ぶ、という選択肢は彼の中にはない。例えバラされたら全部が終わる、と分かっているとしても。それこそが本気だから、と。その先に待っているのは意外な展開。ひょんな事から繋がり続ける、柚香との縁なのだ。
より愛の深淵へ深みを増していく今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。