読書感想:教え子とキスをする。バレたら終わる。

 

 

 さて、「教師と生徒」の恋愛ものというのは背徳的ラブコメの草分け的存在であるのかもしれない。教師と生徒、という立場で恋愛する作品、と連想すると私の世代がバレてしまいそうな古の作品ばかりが出てくるので、明言を避けさせていただくとして。最近、一つのジャンルとして定着を始めている、背徳ものの作品。この作品もまた、背徳であり。恋愛に依存しているヒロインとの間に絆を紡いでいく、背徳であり一種の純愛な作品なのである。

 

 

 

「空気を読む力だけで生徒会長になったから、そうじゃないと務まらないです」

 

学校では教師や生徒からの信任も厚い、特に出しゃばる事はなくも肝心なところはきちんとまとめる真面目な生徒会長、灯佳(表紙)。表紙の姿だけを見ていると、真面目? と首を傾げてしまうかもしれない。しかしこれは、主人公である新任教師、銀にだけ見せている姿である。

 

「私の身体、気持ちいい?」

 

 では何故彼女は彼にだけそんな姿を見せているのか? それは、彼の方がとある弱みを握られているから。一流企業に新卒で入るも、研修を体調不良で全部休んでしまった事で最初からつまずき、結局ドロップアウトして半年で退職してしまい。荒れた時期をずっと支え続けてくれたネット上の友人こそが彼女であり。際どいやり取りもしていたという証拠を押さえられてしまったからこそ、逆らえぬのだ。

 

学校では真面目、しかし二人きりの時だけは大胆に、どこか小悪魔のように。べたべたと密着してくるし、一緒に居る時はいつも距離が近くて。他の女の匂いを期せずしてさせていた時は、嫉妬深く押し倒して来て。まさに貴方は私のもの、と言わんばかりにぐいぐいと来る。何故彼女はそこまでするのか。それは、心の隙間を埋めるため、か。父母の不仲と別居、ある意味上手くまとまってはいるけれど、傍から見たら歪な家族の絆であり、子供にとっては悲しいもの。その隙間を埋めるように、彼女は銀と距離を詰めている。

 

思わずのめり込みそうになってしまう、堕とされて搦めとられて行こうとする。何とか踏みとどまろうとする矢先、二人で日帰り旅行に行った先で、銀の指導役である教師、暮井とばったり遭遇してしまい、二人の関係が露呈する事となる。

 

不安からの別離、そして面談で遭遇した灯佳の母親。親としての最低のあり方を見、銀の中で決まるのは覚悟。今までは中途半端に子供だった、それを返上するために。暮井の事について探る中、彼女の弱みを握る事に成功し、結果的に秘密を握り合う事で手打ちとする事に成功する。

 

「大好きだよ、せんせ」

 

また元通りに戻った、二人の秘密の関係。しかしそこにあるのは、今は背徳よりも純愛で。大好きだからこそ、大切にしたいからこそ、という思いが二人を繋いでいくのである。

 

どこか背徳感を漂わせながら、根底には真っ直ぐな愛があるこの作品。心を揺らす愛が見てみたい読者様には是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。