読書感想:週に一度クラスメイトを買う話3 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~

 

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読書感想:週に一度クラスメイトを買う話2 ~ふたりの時間、言い訳の五千円~ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、恋人と言うには遠すぎて、友達と言うには合わなさすぎて。五千円と言うもはや縛る鎖のようになった対価で繋がる、志緒里と葉月の関係。ラノベ史上割と中々見ないであろう、この微妙な関係性を何と呼ぶべきなのだろうか。私は表現する語彙を持っていない訳であるが。と、まぁそんな話題はともかく。卒業式の日まで、と決めた二人の関係。終わりは既に定められ、そして夏休みも終わった事で、残る期間はあと半年ほどしかなく。終わりが見えている以上、其処へ向かって突き進むしかないのである。

 

 

「ねぇ、宮城。私と同じ大学受けなよ」

 

夏が終われば受験生にとって待っているのは何か、それはいよいよ受験勉強追い込みの季節。少しずつ実感していく、進学してしまえば二人の関係は終わってしまうと言う実感。そんな中、葉月から持ち掛けられた提案が志緒里の心を揺らす。一緒ならそれもいいか、と少し期待してしまう心と、別に大学に行ってまで関係を続ける意味なんてない、という心が交錯する。

 

「理由がなくても、触りたくなることくらいあるでしょ」

 

「文化祭、一緒に楽しもうと思って」

 

 

そんな中、思惑を超えて、約束を越えて。一歩、また一歩と詰め寄られる距離。近い、と言っても、違う、と言っても。今更拒むには、二人の関係は近すぎて。そんな中、相手の心にだけ思い出が残っていればいいと言うけれど、それにしては、また思い出を増やそうと言うかのような選択肢をとろうとしてしまったり。自分と同じ大学、ではなく友人と同じ大学、というのが少しだけ面白くなかったりして。

 

「それは、私にここに残ってほしいってこと?」

 

「質問してるの、私なんだけど」

 

 

少しずつ、将来的な思いも見つめ、望み、らしき言葉も出てきたりして。だけどやっぱり、肝心なところで交わらない。それが自分達の関係だ、と言わんばかりに言おうとしていた答え、思いは風に溶けていく。

 

しかしやはりもう一度言うが、彼女達が一緒にいる時間はもうそんなに長くはない、どころか僅か。段々と終わりに近づき意識していく、その関係は次巻、いよいよ終わりの結実を迎える訳で。

 

さて、最後に彼女達が選ぶ選択、関係とはどんなものになるのだろうか。今から期待してゆっくりと待っていきたい次第である。

 

段々と近づいていく距離に比例して、より分からなくなっていく思いの答え。果たしてそれはどんな名前になるのだろうか。